ネイチャードキュメント 奇跡の地球紀行
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絶海の世界遺産 小笠原
クジラが歌う神秘の楽園
母と子の奇跡のジャンプ!
東京・竹芝桟橋から南へ約1000キロ。
太平洋の真っただ中に浮かぶ世界自然遺産、小笠原諸島の父島を長期に渡り取材しました。
そこは生き物たちにとってまさに奇跡の島。
東洋のガラパゴスと言われる小笠原の自然の魅力と迫力ある水中映像で謎の多いザトウクジラの生態に迫ります。
1 東洋のガラパゴス 小笠原の森
寺沢さんは、小笠原の森に入り様々な固有種の昆虫や植物を撮影しながら、東洋のガラパゴスと言われる小笠原の珍しい生き物や植物の姿に眼を見張ります。。
父島で狙うのは、オガサワラオオコウモリ。オガサワラオオコウモリは翼長2メートルの巨大なコウモリでヤシの芽やタコの木の実を食す、フルーツバットの一種。今は、生息数200~300頭と推定される絶滅危惧種です。このオオコウモリを追って森の中に入り、果物を補植する生態をカメラに収めます。
さらに、サンクチャリーと呼ばれる外敵からの侵入を防ぐために金網で囲まれた自然保護林に、ネイチャーガイドの金子さんに同行してもらい入っていきます。この森に入るためには、自然を知り尽くしたネイチャーガイドの同行が必要なのです。この森は絶滅が心配されているアカガシラカラスバトの繁殖地。このハトは野生のハトの一種ですが、頭から胸にかけて赤や緑に輝く美しい羽色が特徴です。米軍が持ち込んで野生化したヤギに植物を食い荒らされて棲家を狭められ、ペットとして持ち込まれ野生化した猫にヒナを補食されて激減、絶滅の危機に瀕しています。
2 豊かな海 ザトウクジラのの繁殖地
小笠原海域では、クジラとその仲間であるイルカも含め、20種類以上の鯨類が確認されています。
冬のザトウクジラ、春から秋にかけてのマッコウクジラ。イルカには1年を通じて会うこともできます。
寺沢さんは、ホエールウォッチングのガイドを務める高橋さんご夫妻の案内で、小笠原の海に向かいます。息を飲む美しい珊瑚礁の海。水中にはユウゼンなど、珍しい固有種の魚が溢れています。
さらに100匹を超えるハシナガイルカの群れに遭遇したり、水中ではフレンドリーなミナミハンドウイルカと一緒に泳いだり、小笠原の海の魚影の濃さに驚かされます。
そしてさらに、旅の最大の目的であるザトウクジラと遭遇します。この時期、父島周辺にはたくさんのザトウクジラが繁殖や子育ての為にやってきています。
ザトウクジラは空飛ぶクジラと言われるほど、その迫力あるブリーチングは定評があります。
ブリーチングはジャンプ行為ですが、なぜジャンプするのか今だに解明されていません。寺沢さんを歓迎するかのようにザトウクジラたちは、たくさんのジャンプを見せてくれました。その中には、母親に寄り添っていたかわいい子クジラの姿もありました。
そして、すべて小笠原ホエールウォッチング協会の特別な許可を得て取材すすめている撮影クルーは、ザトウクジラの求愛行動など貴重な生態を次々に撮影することに成功しました。
圧巻はザトウクジラの親子が見せてくれた水中映像。取材チームのボートに興味を持ち近づいてきた母と子クジラ。そっと水中に潜ると、そこには圧倒的迫力で迫るザトウクジラの親子の姿が間近にありました。
そして、聞こえて来るのは、姿の見えないオスのザトウクジラが発している歌うような鳴き声。
それは、求愛のための、あるいは自分の縄張りを主張するために他のオスを威嚇するためなど、いろいろな説がありますが、その真相は未だ謎のままです。
オスのザトウクジラが歌う声に包まれて、まるでダンスするかのように母と子のザトウクジラが悠然とカメラの眼の前を泳ぎます。