尾上菊之助2015 歌舞伎まっしぐら

尾上菊之助2015 歌舞伎まっしぐら

お知らせ

【放送日時】
2015年5月3日(日) 午後2:00~3:00放送

番組概要

現代の歌舞伎を担う若手スターの中でも、屈指の実力と人気を誇る尾上菊之助(37)。その魅力や演技の秘密に迫るシリーズ第4弾。今回は5月2日から始まる歌舞伎座「團菊祭五月大歌舞伎」初日までの3カ月間の稽古と本番に肉迫。歌舞伎一筋に精進し、次々と大役・難役に取り組む真摯(しんし)でひた向きな姿に加え、出演演目や役柄の背景等の解説も交え、初心者にも分かりやすく歌舞伎の魅力を伝える。

歌舞伎界で歴史のある興行「團菊祭」は、幕末から明治にかけて活躍し、近代歌舞伎の礎を築いた名優、九代目市川團十郎と五代目尾上菊五郎をたたえしのぼうと、昭和11年(1936)に始まった。音羽屋・尾上菊五郎家は、世話物(江戸時代の現代劇で町人社会・世相風俗を扱った演目)を得意とし、立役・女形の両方を演じる「兼ねる役者」の家系。

「摂州合邦辻」 玉手御前

今年の「團菊祭」で菊之助が演じるのは女形屈指の大役、「摂州合邦辻(せっしゅうがっぽうがつじ)」の玉手御前(たまてごぜん)だ。父菊五郎でさえ初役が48歳だったのを、菊之助は33歳(2010年5月大阪松竹座)で演じ、同年12月には日生劇場で通し上演も行い第18回読売演劇大賞優秀男優賞を受賞した。玉手御前は後妻となるが、継子の俊徳丸に恋をし、計略により醜い顔となる毒酒を飲ませた上で執拗に恋をしかける。それを見かねた玉手の実父・合邦が、刃で娘を刺すと、苦しい息のもとで玉手がこの恋の意外な真実を語り始める…。歌舞伎ファンならずとも、菊之助の妖艶さと、複雑な恋心の造形力は必見だ。

「一谷嫩軍記」陣門・組打 無官太夫敦盛

源平の合戦を題材とした時代物(江戸時代以前の公卿・僧侶・武家などの社会を題材とした演目)の名作「一谷嫩軍記(いちのたにふたばぐんき)」陣門・組打(歌舞伎座 二月大歌舞伎)。歌舞伎座で岳父・中村吉右衛門との本格的な初共演が話題となった舞台。源氏の武将・熊谷直実(吉右衛門)が敵将・平敦盛の身替りとして我が子・小次郎(菊之助)を討ちとる悲劇。菊之助には、初陣の小次郎の意気揚々たる若武者ぶりと、平家の大将であり都人としての品位の演じ分けが求められる。番組は、吉右衛門、菊之助、双方へのインタビューから、作品背景と役柄の捉え方について深く掘り下げる。

「積恋雪関扉」 小野小町姫

「世話物」「時代物」共に、歌舞伎の重要なジャンル「舞踊」。通称「関の扉(せきのと)」で知られる歌舞伎舞踊の大曲「積恋雪関扉(つもるこいゆきのせきのと)」(歌舞伎座 二月大歌舞伎)で、菊之助は、先人に倣って小野小町姫(前半)と傾城墨染実は小町桜の精(後半)の二役を踊った。逢坂の関にある庵で暮らす恋人・良峯少将宗貞(中村錦之助)のもとを訪れる小町姫。天下を狙う関守の関兵衛実は大伴黒主(松本幸四郎)を阻止しようとする傾城墨染実は小町桜の精。同じ女形でありながら、衣裳や化粧によりどう演じ分けるのか?カメラは楽屋や舞台裏に誂らえられた「拵え場(こしらえば)」で化粧をし衣裳を纏う、めったに見ることのできない菊之助の姿を捉える。

「菅原伝授手習鑑」賀の祝 桜丸

菅原道真=菅丞相(かんしょうじょう)の太宰府流罪を題材にし、歌舞伎三大名作のひとつとして今なお絶大な人気を誇る義太夫狂言「菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)」(歌舞伎座 三月大歌舞伎)。菊之助が演じる桜丸(さくらまる)は、菅家の屋敷を預かる四郎九郎の三つ子の兄弟の末っ子。桜丸は優しい心の持ち主で、舎人(とねり)として仕える斎世親王(ときよしんのう)と菅丞相の娘苅屋姫(かりやひめ)との仲を取りもったことで、丞相が九州・大宰府に流罪となり、それを悔やみ切腹して過ちを償う。音羽屋の代々が得意とし、歌舞伎独特の「型(=作品や役の解釈によって行われる特定の演技や演出)」が継承されている桜丸について、菊之助へのインタビューに加え、桜丸が「車引」でしている「剝き身隈」についてなど、歌舞伎独特の鑑賞ポイントも分かりやすく伝える。

「日中友好 京劇・歌舞伎 北京公演」カーテンコール

4月2・3日の2日間、「日中友好 京劇・歌舞伎 北京公演」で、菊之助は「春興鏡獅子(しゅんきょうかがみじし)」の小姓弥生/獅子の精を踊り、カーテンコールでは京劇の俳優を舞台に呼び込み、観客からスタンディングオベーションの大喝采を浴びた。昭和54(1979)年、日中国交回復後初の日本の文化使節として歌舞伎の訪中公演が訪れた際、祖父梅幸が「鏡獅子」を踊って以来、今回36年ぶりの菊之助の上演となった。舞台は、京劇の名優梅蘭芳(めいらんふぁん)の名を冠した約千人収容の劇場だが、後半、獅子となって登場する花道はない。菊之助は、長唄囃子連中の後ろのふすまを開き、長唄の詞にある中国の清涼山の絵を背負う形に演出を改め、満員の客席の興奮を呼び起こした。日本代表として最高のパフォーマンスを見せようと、妥協をせず舞台に取り組む真摯な姿に、舞台袖でも、京劇の役者や中国人スタッフから惜しみない拍手が浴びせられた。

旧金毘羅大芝居(金丸座)

北京から帰って休む間もなく、菊之助は、香川県琴平町にある現存する日本最古の芝居小屋・旧金毘羅大芝居(金丸座)での第三十一回四国こんぴら歌舞伎大芝居に臨んだ。180年前の天保6(1835)年に建てられ、江戸時代の芝居小屋の劇場機構をそのまま使える金丸座には、ここでしか見られない演出を楽しもうと、毎年、日本中から熱心な歌舞伎ファンが押し寄せる。歌舞伎では、主役を勤める役者が演出も兼ねるため、菊之助は「伊勢音頭恋寝刃(いせおんどこいのねたば)」福岡貢と「曽我綉俠御所染(そがもようたてしのごしょぞめ)」御所五郎蔵を演じると共に、仮花道(今日の歌舞伎では下手寄りにのみ花道があるが、上手寄りにかつてあった花道)、空井戸(本花道の付け根にある仕掛け。奈落と繋がっていて、役者の出入りに使われる)、明かり窓(東西二階桟敷席の外側の廊下にある、人の手で開閉する揚げ戸。照明装置がなかった時代に、自然光を巧みに使うことが重要だった)、廻り舞台(人力で動かすための仕掛けが奈落にあり、金丸座には4本の力棒や、足を踏ん張るための36個の力石が埋め込まれている)等を用いて、観客を楽しませた。

取材対象公演予定

①「一谷嫩軍記(いちのたにふたばぐんき)」陣門・組打 熊谷小次郎直家/無官太夫敦盛
②「積恋雪関扉(つもるこいゆきのせきのと)」 小野小町姫/傾城墨染実は小町桜の精
以上 歌舞伎座 松竹創業120周年 二月大歌舞伎

③通し狂言「菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)」序幕「加茂堤」、四幕目「車引」、
五幕目「賀の祝」 桜丸
以上 歌舞伎座 松竹創業120周年 三月大歌舞伎

④日中友好 京劇・歌舞伎 北京公演「春興鏡獅子(しゅんきょうかがみじし)」小姓弥生/獅子の精
以上 中国・北京 梅蘭芳(めいらんふぁん)大劇院 4月2・3日

⑤「伊勢音頭恋寝刃(いせおんどこいのねたば)」野道追駈けより油屋奥庭まで 福岡貢
⑥「曽我綉俠御所染(そがもようたてしのごしょぞめ)」御所五郎蔵(ごしょのごろぞう)御所五郎蔵
以上 旧金毘羅大芝居(金丸座) 第三十一回四国こんぴら歌舞伎大芝居

⑦「摂州合邦辻(せっしゅうがっぽうがつじ)」合邦庵室の場(がっぽうあんじつのば) 玉手御前
以上 歌舞伎座 松竹創業120周年 團菊祭五月大歌舞伎

■出演:尾上菊之助