「進化する情報ビジネス~ネット社会のイノベーション~」
加速度を増して進化するIT事業。総務省によれば我国のインターネット利用者は9408万人。人口普及率は78.0%に達した。(平成22年1月統計)また、世帯におけるブロードバンド利用の割合は76.8%で、この内41.1%が光回線に接続しているという。インターネットは、既に特別なものではなく、生活の必需品となっていると言えよう。政府はブロードバンドの全国普及による、来年度から10年間の経済効果を73兆円と試算している。インターネットの進化によって、社会はどのように変化しているのか、その最前線を紹介する。
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「オンラインクリニック/テレビ電話相談」
パソコンとWEBカメラを使い、テレビ電話感覚で、医師と直接対話ができる24時間365日対応の医療相談サイトが「オンラインクリニック」。メールでの相談と違い医師と患者が、リアルタイムでお互いの表情を見ながら話をすることが出来る。ブロードバンドに接続できる環境であれば、特殊なソフトは必要ない。(※Adobe Flash Player使用)名古屋ステーションクリニックと提携しているため、実際に診療を受けることも可能だ。
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「クーコム/クーポン共同購入」
クーコムは、サイト「トクー!トラベル」を運営し、インターネットの強みを最大限の武器に、様々な魅力的サービスを展開している。旅行事業以外でも、例えば通販でものを購入する場合、「トクー会員」がサイトを経由して注文すると、通販業者からクーコムに支払われる紹介料が、そのまま会員にポイントとして還元される。
また「トクー!ポン」は、クーポン券の共同購入により、有名旅館やレストランの代金が最大50%~90%オフになるという魅力的な商品だ。これはインターネットのクチコミ力を活用したもので、申込時間を限定し、予め設定した申込数に足りない場合は、クーポン販売が成立しないという仕組み。確実に割引クーポンを入手したいと願うユーザーは、ツイッターやミクシィ、携帯メールなどを駆使し、仲間を募ってクーポン販売を成立させようと積極的に動く。つまり、ネットを通じて顧客自身が宣伝・営業をしてくれるわけだ。
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「プラスソフト/電子黒板用手書き入力ソフト」
全面改訂される来年度の小学校教科書のうち、50%が電子黒板に対応した指導用デジタル教科書を発行する予定であるという。昨年全国の公立小中学校で約1万3000台だった電子黒板は、補正予算がついたことから、更に2万台増える見通しだ。電子黒板に対応した手書き入力ソフトを開発するベンチャー企業「プラスソフト」では、コンピューターの世界に、人間的な温かみを持つ「手書き文化」を融合させたソフト開発に努め、シェアを拡大している。
取材先
・名古屋ステーションクリニック
・クーコム
・プラスソフト
ゲスト:米倉誠一郎 (一橋大学イノベーション研究センター 教授)
1953年 東京都生まれ。
一橋大学社会学部、経済大学卒業。一橋大学大学院社会学研究科修士過程終了後、ハーバード大学にて歴史学の博士号を取得。
1995年 一橋大学商学部附属産業研究経営施設教授に就任。
1997年 一橋大学イノベーション研究センター教授に就任。
2004年 株式会社教育と探求社取締役(非常勤)に就任。
2008年 一橋大学イノベーション研究センター長に就任。
日本経済新聞社が、2001年より東京都内で開催している、高校生対象のイベント「日経エディケーションチャレンジ」の校長を務める。
著書に「経営革命の構造」岩波新書、「ネオITの革命」講談社、「脱カリスマ時代のリーダー論」NTT出版など多数。