川井郁子が奏でる西洋の名画 徳島 大塚国際美術館

川井郁子が奏でる西洋の名画 徳島 大塚国際美術館

放送内容

大塚国際美術館を訪れるのは、ヴァイオリニストの川井郁子。西洋名画と音楽との出会いを求めて、広大な館内へ。全作品を鑑賞していくと4kmもの距離になるという、地下3階から地上2階の展示スペースには、独特の展示方法があるという。
それは「環境展示」。
古代遺跡や教会などの壁画を、環境空間ごとそのまま再現することで、本場さながらの臨場感を味わうことができる。
例えば「システィーナ・ホール」はミケランジェロ・ブオナローティが描いた壁画「最後の審判」や「天地創造」「楽園追放」などが天井を彩る、バチカン宮殿のシスティーナ礼拝堂をそのまま立体再現している。
そして、19世紀初頭にナポレオン戦争で破壊され散逸したものを推定復元した「エル・グレコの大祭壇衝立画」。この復元作業は、世界初の試みだ。
さらに、スペインの画家フランシスコ・デ・ゴヤが晩年、自宅の壁に描いた「黒い絵」のシリーズを再現した同一空間…。

さらに、大塚国際美術館では、「系統展示」という方法も採用。古代から現代にいたる西洋美術の変遷を美術史的に理解できるよう、順を追って展示している。
その中には、修復前の状態と修復後のものが向かい合わせの壁に再現された、レオナルド・ダ・ビンチの「最後の晩餐(ばんさん)」も展示。修復前後を原寸大で比較、鑑賞することができるのは世界で唯一、この美術館だけだ。
館内のレストランでは、「最後の晩餐」に描かれているのと同じ食事を味わうことができる。

また、同じテーマの作品を同じ展示室に置く試みも。新約聖書の「受胎告知」の場面は、これまで多くの画家が題材にしてきた。天使ガブリエルがマリアの前に現れ、マリアが聖霊によってイエスを身ごもることを告げるシーン。

大塚国際美術館では、サンドロ・ボッティチェリ、レオナルド・ダ・ビンチ、シモーネ・マルティーニ、フラ・アンジェリコらの作品を同じ部屋に並べてあり、それぞれの表現の違いを知ることができる。
このほかにも、ピカソの子孫が陶板の再現技術に驚嘆したという「ゲルニカ」など、西洋名画の数々に出会う。


心を揺さぶる名画たちから刺激を受けた川井は、作品の前でバイオリンを奏でる。
演奏したのは3曲。母親でもある彼女が魅了されたラファエロ・サンツィオの「聖母子像」前でのジュリオ・カッチーニの「アヴェ・マリア」。ピエール=オーギュスト・ルノワールが描いた乙女たちの絵の前では愛娘のために作曲したオリジナル「ア・リトル・ガール・グリーン」を演奏。
そして、ミケランジェロ「最後の審判」をはじめ壁画と天井画に覆われたシスティーナ・ホールで演奏するのは、ホルストの名曲「ジュピター」。

瀬戸内海の向こうに見える、淡路島や鳴門大橋。豊かな自然に囲まれた安らぎの空間には、日常の喧騒を忘れた静けさがあった。川井は名画たちに思いをはせながら、バイオリンを奏でる。

トップに戻る