イタリアへ・・~須賀敦子・静かなる魂の旅~

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スタッフノート

制作スタッフが、イタリア・須賀さんへの想いと、
番組がどのようにして作られたか、見どころなどを語ります。




【演出・重延浩より】
須賀敦子さんには、その本を一度読むと離れられなくなる熱狂的な愛読者がいます。でもあまりにも静かに登場し、そして静かに逝ってしまったために、その名を知らない人も多いという作家です。その才能は、夭折しなければ、さらに広く、強く、深く、日本人の心を捉えたに違いないかけがいのない作家です。品格のある、繊細な、そして人々の心情を、的確に優しく捉えた独創的作家といえます。
この番組は、そんな須賀さんの文筆の中から、彼女がもっとも大切な時間と心を費やしたイタリアを、テレビジョンで辿ってみるという企画です。

「きっちり足に合った靴さえあれば、じぶんはどこまでも歩いていけるはずだ。」

そんな須賀さんの言葉に誘われて、イタリアを旅していきます。
この番組に出演者は誰もいません。見る人が想像する須賀さんの影が、ただ一人の出演者といえるかもしれません。須賀さん30歳代のミラノでの翻訳活動と、夫となるペッピーノの出会いの時代を、イタリアの美しい風景と、その頃の須賀さんと同世代とも言える原田知世さんの、静かで、素直で、揺れるような心の朗読で綴った「テレビエッセイだ」ともいえる番組です。
須賀さんの魂を追うようにという演出家のテーマでスタッフは、ミラノ、ヴェネツィアウディナ、フリウリ・チヴィダーレ、グラード・トリエステを旅しました。
6月のイタリアは猛暑で、38度くらいの熱射の中、撮影は連日続けられました。6月の下旬は北で言えば、白夜の季節です。スタッフは朝6時から夜10時まで、長い日照時間のすべてを撮影に使いきりました。須賀さんがひとりで歩くような気持ちで撮影する、それが映像によるテレビエッセイの基本的な撮影方法でした。
撮影班は須賀さんの魂を想像しながら歩きました。でもハイビジョンの映像で須賀さんの世界を見た私たちは、まったく新しいイタリアを教えられたと感じさせられました。すでにイタリア好きのスタッフでも、この旅では、須賀さんにもうひとつのすばらしいイタリアへと導かれたのです。

【プロデューサーより】
この番組が産声を上げた最大で唯一の理由。
それはBSデジタルならではの挑戦的な番組を作りたいという制作者の強い思いです。
BSデジタルは大人向けのメディア、ターゲットセグメントされたメディアなど様々な評価があります。私はそれに付け加えて、BSは作り手の想いが伝えられるメディアであると思います。
地上波では、なかなか製作者の挑戦的な演出が叶うステージが少なくなってきています。
そんな中「テレビエッセイ」という形で須賀敦子さんの上質な世界観を表現したいという演出家の重延浩さんの思い。
出演者は起用しない。テレビ画面に映るのはイタリアの風景と人々だけ。
須賀敦子さんのエッセイの中に込められた「魂」の軌跡を、丁寧に追いかけたい。
通常のテレビ番組での文法とは違うアプローチでの表現を求めました。
それに共鳴するように朗読の原田知世さん、数々の美術番組のカメラを担当している重本正さん、番組に客観的な視点を加えるナレーションの湯浅真由美さん、音楽の今井信子さん。須賀敦子さんの「魂」をテレビ番組で伝えたいというそれぞれの思いが結実した番組です。秋の夜長に、是非、ゆっくりとした気持ちでご覧いただきたいと思います。
BS朝日 有賀史英

【スタッフ】  
出典・著者 須賀 敦子
朗読 原田 知世
ヴィオラ演奏 今井 信子
ナレーション 湯浅 真由美
   
脚本・演出 重延 浩
撮影 重本 正
制作プロデューサー 渡辺 誠
  三戸 浩美
   
プロデューサー 有賀 史英
  重延 浩
   
企画 テレビマンユニオン
製作 BS朝日 テレビマンユニオン