日本で生まれた一人の若い女性が欧州にわたり、イタリアで出会った男性と結婚。決して裕福とはいえない生活だったが、夫の親族や友人達と深く人間関係を知り合える時間を過ごした。
しかし、結婚6年目に最愛の夫と死別。イタリアを離れ、日本に帰国後は、大学教授を務めるかたわら、イタリア文学の翻訳などを手がける。60歳を越えて書いた、自らのイタリア時代のエッセイが、文学界に衝撃を与える。その清々しい描写に、熱心なファンが多い。
須賀敦子(すが・あつこ)プロフィール
1929年兵庫県生まれ。聖心女子大学卒業。1953年よりパリ・ローマに留学、その後イタリアに在住し、1960年ミラノのコルシア書店の企画に参加、1961年コルシア書店をとりしきっていたペッピーノと結婚。しかし6年後の1967年に夫と死別。1971年帰国。上智大学比較文化学部教授。『ミラノ 霧の風景』で1991年講談社エッセイ賞、女流文学賞受賞。1998年逝去。
<主な作品>
- 『ミラノ 霧の風景』 (白水社90)
- 『コルシア書店の仲間たち』 (文芸春秋91)
- 『ヴェネツィアの宿』 (文芸春秋93)
- 『トリエステの坂道』 (みすず書房95)
- 『ユルスナールの靴』 (河出書房新社96)
- 『遠い朝の本たち』 (筑摩書房98)
- 『時のかけらたち』 (青土社98)
- 『本に読まれて』 (中央公論社98)
- 『イタリアの詩人たち』 (青土社98)
心に残る荒れた風景のなかに、
ときどき帰って住んでみるのも、わるくない。