昭和偉人伝
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棟方志功
エネルギッシュな輝きに充ちた板画(ばんが/版画)で、世界的に高く評価された棟方志功。作品のみならず、その生きざまも強烈だった。仏典や文学、音楽をモチーフに取り入れた一方、女人像に現れたフェミニズムやエロチシズムが、現代の日本版画界に新たな息吹をもたらした。
・「板の声を聞け」 板画への目覚め
油絵で帝展に応募し、落選ばかり続いた時代を経て、妙(たい/白)と黛(たい/黒)が拮抗(きっこう)する板画の魅力に開眼。板木の息づかいを読み取りながら一途に彫り進めると、独自の世界観が立ち現れた。(作品「善知鳥版画巻」「二菩薩釈迦十大弟子」ほか)
・「わだばゴッホになる」 恩人たちとの出会い
青森に生まれ、絵ばかり描いていた鍛冶屋のせがれ。ゴッホの「ひまわり」に感動し、洋画家を目指して上京。その強烈な自我を受けとめた恩人たちの導きが、棟方志功という原石を輝かせた。(作品「雪国風景図」「大和し美し」ほか)
・女人像開眼、そして世界へ
戦争からの開放とともに、棟方に女人崇拝や母性礼賛を芽吹かせた文学や音楽など、あらゆる芸術に刺激を受けてたどり着いた「無」の境地。その作品は海外でも高い評価を得ていく。(作品「女人観世音板画巻」「歓喜自板像」「流離抄」ほか)
・「父に答ふ」 創作を支えた家族の絆
小さい頃から視力が弱くやがて左目を失明した後も、世界中を旅して現代を写し続けた棟方と、陰で支えた妻の献身。最晩年に残した板画には、亡き父の思いに応えたメッセージが刻まれていた。(作品「東海道棟方板画」「大印度厖濃図」「捨身飼虎の柵」ほか)
詩人・草野心平が「ゴッホになろうとして、ゴッホにはならずに、世界のMunakataになった」とうたった棟方志功。「いのち」と向き合い、祈りを込めた数万点を超える作品の中から、名品を厳選して紹介するとともに、生きる喜びに満ちあふれた芸術家の生涯を追う。