昭和偉人伝
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東山魁夷
この世を去って18年が過ぎた今も、高い人気を持つ画家 東山魁夷。その画家人生は、決して平坦ではありませんでした。自然と向き合った傑作「残照」で風景画家として認められた東山は、柔らかな色使いや安らぎを覚える独特の画風で、日本画の歴史に一時代を築きました。
●絶望の中に見えた一本の「道」・・・・戦後、全力を傾注した作品が日展に落選し、母と弟も死去。哀しみの中で、進むべき道を見失った東山は、千葉・鹿野山に登り、眼前に広がる大自然に己の心の姿を見つけ、絵筆を取った。(作品「残照」、「道」、「光昏」他)
●父親との葛藤、母親からの慈愛・・・・感情のままに生きる父と、耐え忍ぶ母を見て育った幼少時代。病弱だった東山の慰めは絵を描くことだけ。父の反対を押し切って美術学校へ入り、挿絵のバイトを描きながら苦学を続けた。(作品「自画像」、「コドモノクニ」他)
●ドイツ留学と伴侶との出会い、そして戦争・・・・帝展入選後、ドイツ留学を果たした東山。帰国して恩師の娘・すみと結婚するも、父と兄は相次いで死に、自分も召集令状を受け取る。戦車に爆弾を抱えて飛び込む訓練が続く中、死を覚悟する。(作品「ヨーロッパ風景」、「凪」他)
●「白い馬」とモーツァルトの秘密・・・・風景画家として画壇で認められた東山は、ある時、モーツァルトのピアノ協奏曲からインスピレーションを得て、連作「白い馬の見える風景」を書いた。風景画家・東山が描いた動物と音楽の秘密とは(作品「白い馬の見える風景」、「夕星」他)
美術の世界に、新たなファン層を掘り起こした東山魁夷。大いなる「自然」と「調和」を重んじた作品群は、戦後の日本が失ったものへのオマージュとも言えます。東山魁夷の作品世界と画家人生をたどることで、改めて「日本人の心」の原点に迫ります。