昭和偉人伝
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賀川豊彦
1939年、アメリカで出版された「Three Trumpets Sound」という本で、ガンジー、シュバイツァーと並び20世紀の三大聖人と称された日本人がいた。その人の名は賀川豊彦。当時、賀川豊彦は生活に苦しむ貧しい人々を救済する活動に我れを顧みず取り組んだ。
その一方で、彼は大正時代に空前絶後の400万部を超えるベストセラーの小説を書く文学者でもあった。自伝的小説「死線を越えて」では、自身の前半生を重ね合わせた主人公が弱者を救い、しいたげられていた労働者のため、労働争議などで問題を解決する様が力強く描かれた。また、この小説は当時の日本が抱える社会問題を浮き彫りにする記録的な側面をも持ち合わせ、歴史的に意義のある作品になった。実は、日本人で初めてノーベル文学賞と平和賞の候補になったのは、賀川豊彦だ。この作品を読んだ、後のノーベル賞作家・大江健三郎に、「なんて面白い小説なのか…。あんなにも多くの読者の心をつかむ作品を書くことは、とても自分にはできない」といわしめている。
賀川豊彦は、大正から昭和にかけて社会運動家として弱者救済を訴え、「労働組合」「生協」「農協」など、現在にまで続く日本の相互共助の基礎を作り上げた。「21世紀の日本をグランドデザインした男」呼ばれる、賀川豊彦の人生に迫る。