映画情報

2014年12月8日
鬼才キム・ギドク監督最新作は、“映画史上最も壮絶なヒューマンドラマ”『メビウス』

『サマリア』、『うつせみ』、『絶対の愛』など、時代を風刺しつつも偏愛に満ちた唯一無二の作風を持ち、『嘆きのピエタ』でヴェネチア国際映画祭金獅子賞を受賞したキム・ギドク監督の最新作『メビウス』。監督自身の歴史でも類をみない狂気の領域へと足を踏み入れた。その過激さから韓国では上映制限がなされ、日本でもR18指定で公開がようやく決まった問題作だ。
父・母・息子の3人が暮らす上流家庭。家族としての関係は冷え切っていた。ある日、夫の不貞に気づき、嫉妬に狂った妻は、夫の性器を切り取ろうとする。しかしあえなく失敗し、矛先を息子に向ける。妻はそのまま家を出ていき、夫と息子は取り残される。性器を切り取られてしまった息子は絶頂に達することを知らずに生きていくのか。なくしたことで虐められ、生きて行く自信をもなくした息子。罪悪感に苛まれる父はそれでも絶頂に達することができる“ある方法”を発見する。それを息子に教えることで、再び関係を築いていく。だが、そこに家を出ていた妻が戻り、家族はさらなる破滅への道をたどり始める――。
『メビウス』にはせりふがなく、キム・ギドク監督は「笑う」「泣く」「叫ぶ」という感情要素だけで作品を創造した。そんな難しい演出に見事に応えたのは俳優陣だ。“キム・ギドクのペルソナ”と呼び声の高いチョ・ジェヒョンが不貞な父を演じた。イ・ウヌは嫉妬に憑かれた狂気の母、そして夫の浮気相手である妖艶な女を一人二役で見事に演じ分け、強烈な印象を残す。そして、『未熟な犯罪者』で第25回東京国際映画祭最優秀男優賞を受賞した韓国映画界の新星ソ・ヨンジュが性器をなくし苦悩する息子を閑寂に演じている。親子、男と女、痛みと快楽…壮絶な愛のドラマ『メビウス』は12月6日よりシネマカリテで公開のほか、順次全国公開。

■公式サイト:http://moebius-movie.jp/