映画情報

2014年8月18日
『サスペクト 哀しき容疑者』主演のコン・ユ、「体を鍛えた理由は…」

アクション映画『サスペクト 哀しき容疑者』が9月13日より新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー公開される。同作で、北朝鮮特殊部隊の元エリート工作員を演じたコン・ユが、同映画について語った。
―本作出演のきっかけは。
「除隊後、一番多かった映画のオファーがアクション、スリラー系でした。個人的にはアクションへの挑戦にあまり関心がなかったので、『サスペクト』へのオファーをいただいたあと、監督にお会いしてお断りしたのですが、その場でまた考え直してほしいと熱烈なオファーをいただいたのです。監督が積極的に役者に2回も嘆願してくださるなんて、そうはありません。断りに伺ったのに、その場所でまさかの意気投合となってしまったのです。監督なら、私が心配していた安易な見せ場があるだけのアクション映画にはならないとその場で確信しました」 ―北朝鮮のスパイ役ですが、キャラクター作りで気をつけた部分は? 「正直に言うと、これまでに撮影した映画とは違い、何も考えずに演じました。なぜなら冷徹なドンチョルになるには、何も考えないことが最良の方法だと思ったからです。一番悩んだ部分は北のなまりです。ドンチョルは、現役のスパイではなく、元スパイという設定でした。スタート地点が違うため、話し方から違うキャラクターを作り出す必要があったのです」 ―役作りとともに、体作りにも力を入れられたようですが。
「僕の体を見てCGだと言う人がいたそうです。皆さんに体を自慢するために鍛えたのではありません。ドンチョルは言葉より行動で示す人物です。腹がたってブチ切れたと口で言うのではなく、死ぬまで追い詰めてその怒りを行動で示すのです。そのような固い意志の表れがまさにあの体なのです。なるべく非現実的に、怪物のように見えるよう仕上げました。劇中、上半身を脱ぐ場面は非常に重要なシーンとなります。彼がどのような過程でこんな恐ろしい風貌を持つことになったのか、ひと目で理解させるカットでした。筋肉ひとつひとつにストーリを込めたというと大げさですが、本当なのです。徹底的な自制の元に作られた体、その体を作り上げるのは並大抵なことではありませんでした。撮影のため何カ月も好きなビールや即席麺などもやめて、オリンピック選手のような生活をしました」 ―アクションシーンの連続でしたが撮影はいかがでしたか? 「車の運転が大好きなので、こんなドライブができるチャンスは今しかないと、アドレナリン全開で楽しみながら挑みました。撮影監督には、危ないのでスピードを落とすようにと言われました。死にはしないのだからと楽しんでいたのですが、車でバックしながら階段を駆け下りるシーンは、撮り終えた後になってようやくその危険性を感じました。というのも、その撮影で一度、車が階段に引っ掛かって止まった際、以前交通事故で経験した、尾てい骨にキーンと響く感覚と同じものを感じ、ああこれは相当危ないな、と自分でもびっくりした記憶があります」 ―ラストシーンでのセリフのない瞳だけの演技が印象的でした。
「『殺人の追憶』のラストシーンで、ソン・ガンホさんがカメラを正面から凝視しますよね。スクリーンを越えてまるで観客と目を合わせるようなカットなのですが、カメラとの対決で決して負けてはならないのです。幸い『トガニ 幼い瞳の告発』のエンディングで、レベルは違うものの似たような演技の学習ができていたので、今回このようなエンディングを生むことができました。僕にとってこのラストシーンは、他のどのアクションにも代えがたい貴重な場面です」 ―今後どのような役にチャレンジしたい? 「役者というのは観客の愛情を受けながら生きるのですが、彼らの求める姿だけを見せたくはありません。逆に、自分自身が楽しむことができて初めて新鮮味を帯び、新しい楽しみも贈り届けられるのだと思っています。もちろん妥協する部分があるのも事実です。ただ、これからのフィルモグラフィーがロマンティックコメディだけでないのは確かですね」