BS朝日 ザ・ドキュメンタリー

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平成27年度 文化庁芸術祭参加
マイナス60℃の女性記者 南極・北極を取材した12年

「極地から地球が見えてくる」。
朝日新聞の中山由美記者は、こう話す。
12年にわたり南極と北極に通い続けてきた中山記者は、日本で過ごしているとあまり気付かない地球環境の変化を、肌で感じてきた。今回、中山記者が長年取材してきた動画記録から、それを紐解く。
古くから人類が憧れてきた最果ての地、南極と北極。見るものをとりこにし、"光の奇跡"と呼ばれるオーロラが空に広がる極地。希少な動物が数多く生息する北極。マイナス90℃近くにもなる氷の大陸・南極。その極限の世界には、今も手つかずの自然が残されている。
そんな地に魅せられ、通い続けるのは、朝日新聞の記者・中山由美。女性記者として初めて南極観測隊に参加し、南極に2回、北極は4回も訪れ、極地取材のスペシャリストとして活躍している。これまで誰も取材できなかった場所や人に出会い、多くのスクープを報道、数々の賞を受賞してきた。
北極ではグリーンランドの氷河が縮小を続ける。溶け出した水は滝のように流れ、氷河をえぐり深く巨大な穴「ムーラン」を作りだす。南極では、紫外線を多く通すオゾンホールが上空に現れ、二酸化炭素濃度の上昇もとらえている。
人間社会から遠く隔絶された地で地球環境を探る、その最前線を中山記者のカメラは記録してきた。
さらに、南極は地球や宇宙の歴史をも私たちに教えてくれる。観測隊は、映画「南極料理人」の舞台となった「ドームふじ基地」で、72万年前の氷を掘削。内陸の山地では、太陽系誕生を知る手がかりとなる隕石を1万7千個以上も採集。そこには、氷に閉ざされた大陸だからこそ知ることのできる地球の物語があった。
番組では、彼女が撮影してきた貴重な記録から、日本初取材となった南極観測隊の隕石探査、北極で43年にわたり伝統の犬ぞり猟を続けてきた日本人の最後の猟など、私たちの日常生活では決して見ることのできない想像を絶する光景を描き出す。
そして、南極越冬生活での楽しみのひとつが食事。限られた食材で隊員たちを満足させる料理人の奮闘ぶりにも注目する。特別な日は、ふぐ料理やカニ尽くし、おせちからフレンチのフルコースまで、趣向をこらして隊員たちを楽しませる料理人たちの思いに触れる。
今でも毎日トレーニングを欠かさず、いつでも極地取材ができるよう準備を怠らない中山記者。12年にわたる極地取材を通して、彼女は一体何を感じ、何を伝えてきたのか。
2003年春、上司から「南極観測隊」への同行取材の話を唐突に告げられる。姉を交通事故で亡くし、その息子を引き取って、一児の母親になった矢先、息子を残して1年4カ月にも及ぶ取材に行くべきなのか、当時の彼女の胸中とは…。
家族との死別や度重なる障壁を乗り越え、走り続けてきた中山記者。
「地球の今」に迫りながら、彼女が鳴らす地球の未来への警鐘を、今、多くの人々に届ける。