文化遺産の旅
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茨城県・鹿嶋市編



今回の訪問地は、茨城県の鹿嶋市。歴史ある門前町として栄えた、様々な文化を紹介する。
鹿嶋市は、剣豪・塚原卜伝の故郷でもある。五百年の時を超えて語り継がれる不敗伝説に、声の旅人・寺田農も感銘を受けた。
卜伝が編み出した「鹿島新當流」の剣術は、県の無形文化財に指定されている。道場を訪ねれば、そこは厳しい修練の場。一つの文化に昇華した、美しい剣の姿があった。
旅の後半は、北浦の畔から。一の鳥居をくぐって、鹿島神宮へと向かう。日本全国に散在する「鹿島神社」の総本社だ。境内は、まさに文化財の宝庫。江戸時代の楼門に始まり、本殿、拝殿、石の間、弊殿と巡る。時の流れが創った荘厳な伝統美に、声の旅人も感嘆することしきり。宝物館にも足を運び、国宝の直刀を紹介する。長さ3メートルにも及ぶ大きな刀は、製造法もまた特別。伝統技術の継承という視点からも、貴重な資料だ。
やがて境内では、祈念祭が始まった。五穀豊穰、豊作を祈る農耕儀礼だ。秋の新嘗祭と対になって、全国の神社で執り行われる。鹿島神宮の祈念祭は、凛とした風情。心地よい緊張感のもと、粛々と祭典が進んでいく。
茨城県鹿嶋市の文化は、歴史の賜物。故郷に生きた人々の思いを、今に伝える語り部のようであった。