文化遺産の旅
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神奈川県・箱根編



今回の訪問地は、神奈川県。天下の嶮と謡われた箱根の山を左回りに一周。山と温泉と街道の文化を紹介する。

旅路は西から発って、箱根関所へ。江戸時代の東海道にあって、指折りの難所だ。再現された関所は、史実に忠実。当時の旅人の苦労が偲ばれる。

箱根関所を越えて、江戸方面へと東へ進む。いよいよ、山越えだ。笹に覆われた山道には、江戸時代の石畳が敷き詰められていた。今は脇道の様相だが、往時の箱根旧街道である。貴重な遺構として、道は文化財に指定されていた。

箱根八里を越えて、箱根湯本の町へ。旅館萬翠楼福住は、寛永2年創業の老舗。現在の建物は、明治時代初期の建築だ。内外の装飾も美しく、声の旅人・寺田農も絶賛の文化財である。

旅の後半は、精進池方面へ。「箱根石仏群」と呼ばれる、石造文化財が集まっていた。箱根磨崖仏をはじめ、多くは国の文化財に指定されている。旅の安寧を祈ったのであろうか。手入れの行き届いた様子に、声の旅人も心の安らぎを覚えた。

そして塔之沢から宮ノ下を抜けて行く。途中の皇女和宮が祀られている阿弥陀寺には、百万遍転輪や仏像などの文化財が大切に保存されていた。やがて、芦ノ湖の水面が見えて来る。江戸を発った旅人は、絶景の向こうに、前途の希望を見ただろう。箱根の地には、まさに旅の文化が根付いていた。