文化遺産の旅
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静岡県・浜名湖周辺



今回の訪問地は、静岡県。浜名湖とその周辺を訪ねて、人と湖の織り成す文化を紹介する。

旅の始まりは、浜名湖の北を走る天竜浜名湖鉄道から。旧国鉄二俣線を継承した第三セクターの列車だ。開通は昭和15年。駅舎や橋梁は、生きた近代化遺産。歴史的価値ありと認められて、全線が文化財に指定されている。

沿線には、「湖北五山」と呼ばれる古刹群がある。その一つ、宝林寺は、中国明朝の様式に彩られた寺。仏殿は江戸時代の建築だ。異国情緒溢れる境内に、声の旅人・寺田農も目を見張る。

旅の後半は、浜名湖の西へ。旧東海道・新居宿を訪ねた。旅籠「紀伊国屋」は、往時の面影を残す店構え。今は資料館となって、人々を迎えていた。一方、睨みを利かせているのは、新居関。江戸時代の旅人にとって、関所は必ず越えなければならない厄介な存在であっただろう。実際に見る関所の風景は、文字や写真以上に雄弁。厳かな空気が、映像からも伝わって来る。

宿場を出て湖を「今切の渡し」で対岸に、舞坂の北雁木と呼ばれた船着き場が残っていた。東海道はこの地で陸路を離れて、浜名湖を渡る。当時対岸の新居宿までは舟の旅。声の旅人も、湖面を見つめて思いを馳せる。いつの時代も、人は文化を運んで往来を繰り返す。浜名湖を巡る旅の物語には、行き交う人、留まる人の息遣いが感じられた。