文化遺産の旅
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福岡県・北九州門司編



今回の訪問地は、福岡県北九州市。関門海峡に面した門司区を歩き、躍動感あふれる新旧の文化を紹介する。 旅の始まりは、海を望む門司区役所から。合併以前、旧門司市の時代から受け継いだ歴史ある建物だ。建築は、昭和5年。外観・内装共に、優雅な曲線が美しい。文化財に指定された今も変わらず、現役の庁舎として門司区民に愛されていた。 もう一つ、区民に親しまれている文化財がある。門司港駅は、郷土の宝。門司の人々にとって、郷愁の拠り所だ。建築は、大正3年。ヨーロッパのターミナルをモデルに設計された、モダンな外観が印象的である。九州の近代鉄道は、門司港駅から始まったと言ってもいいだろう。折しも九州新幹線の全通を迎えて、声の旅人・寺田農も感慨深げ。鉄道文化の発展に、思いを馳せる。 後半は、市街地を離れて郊外へ。旧サッポロビール工場を訪ねた。重厚に積まれたレンガは、ドイツ・ゴシック様式の面影。大正時代の初期に建築された醸造棟には、ビール製造の設備が残っていた。時間の流れが止まったかのような空間に、声の旅人は息を呑む。 旅の締め括りは、伝統の郷土芸能。甲宗八幡神社で、楠原踊に出会った。古の昔から伝わる、雨乞いの奉納神事だ。五穀豊穰を願う人々の思いは、今も同じ。次々と近代化を受け入れながらも、門司の文化は揺るぎなく伝わっていた。