文化遺産の旅
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東京都・馬込~品川編



今回の訪問地は、東京・馬込から品川。武蔵野の面影を留めた台地から、品川の海へと歩いて文化の香りを訪ねた。

旅の始まりは、池上本門寺から。江戸時代の浮世絵師・安藤広重の作品にも描かれた、歴史ある古刹だ。優雅な五重塔は、池上の象徴。慶長年間の建立とされ、国の重要文化財にも指定されている。

時代は下って、大正〜昭和初期。馬込には、作家や画家などが集って居を定めていた。いつしか人は「馬込文士村」と呼ぶようになったという。声の旅人・寺田農は、文士たちの足跡を巡り、往時に思いを馳せた。

旅の後半は、東に進んで旧品川宿へ。石造りの鳥居に迎えられて、品川神社を訪ねた。富士山を模した富士塚は、人々の祈りを受け止めて厳かな姿。頂に立てば、霊峰登山と同じ御利益があるとされた。江戸時代に隆盛を極めた、富士講文化の賜物だ。

品川神社にはもう一つ、貴重な文化遺産があった。江戸時代の神輿だ。奉納は、三代将軍・徳川家光。明治時代になって、勝海舟が「葵神輿」と名付けた逸話もある。端正な形は天下一品。他の町神輿にも、多大な影響を与えた。

当時の品川海岸は、海苔の産地でもあった。後の埋め立てて海は遠のいたが、運河には今も船だまりがある。声の旅人・寺田農は、揺れる船影に漁師町の名残を垣間見た。