文化遺産の旅
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徳島県・阿波国編



今回の訪問地は、徳島県。渦潮の鳴門海峡を渡り、「阿波」の地に育まれた文化を紹介する。

旅の始まりは、海峡に開けた町・鳴門市から。四国巡礼の札所・霊山寺、江戸時代創業の酒蔵など、人々の営みと共に受け継がれてきた伝統建築が点在していた。聖と俗、分け隔てなく愛されてこその風景。声の旅人・寺田農は、懐の深い伝承文化に感銘を受ける。

撫養街道を西に向かって、旅は坂東俘虜収容所跡へ。第一次大戦で捕虜となったドイツ兵を収容した施設だ。当時を伝える資料は、我々が抱いていた「収容所」のイメージを覆す。捕虜は人権を認められ、故国の生活文化をそのまま持ち込んで暮らしていたとのこと。住民とも自由に交流した結果、彼らのドイツ文化は当地に花開いて根付いた。声の旅人は、今に伝わる建築物など、異国情緒の残り香を訪ねて回る。

一方、鳴門の海は良質の塩を生む塩田にもなった。江戸時代には製塩業が発達し、阿波を支える重要産業となったという。経済的な安定は、文化の発展をもたらす。阿波の人々は、人形浄瑠璃を愛し、伝統を育てた。

旅人は資料館を訪ね、特徴ある人形の数々を丹念に見て回った。鳴門座による実際の上演も堪能し、あらためて日本の郷土芸能の奥深さを知る。阿波徳島の地にも、独特の文化が綿々と息づいていた。