文化遺産の旅
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福井県・鯖街道編



今回の訪問地は、福井県。若狭湾と京の都を結ぶ交易の道「鯖街道」の文化を中心に紹介する。

旅の始まりは、日本海。荒海が削った断崖・蘇洞門から。出漁する漁船を見守ってきた絶景は、荘厳な輝きに満ちていた。

声の旅人・寺田農は、小浜漁港から上陸して鯖街道を歩く。かつて港に揚がった鯖は、京都までの十八里を人々の手によって運ばれていた。その名残が、今も街道沿いの随所に見られる。

起点となる小浜市内・小浜西組の町は、歴史的ある町家が並ぶ一画。文化遺産にも指定された森下家住宅の内外からも、往時の生活文化が伺える。

小浜を出て、約五里。若狭町三宅は、丹後街道と分かれる追分。地蔵堂の上に立てられた火の見やぐらに、声の旅人は驚く。やぐらには、意外な効用が隠されていた。

さらに歩を進めて、瓜割の滝へ。神聖な「森の水」は、名水百選にも選ばれた味わい。ほど近い熊川宿には、瓜割の滝の水を使った鯖料理もあった。

熊川宿の先は、国境の関所。鯖街道は、水坂峠を越えて近江を抜け、京の都へと続いている。緑深い山道の向こうには、海の幸を心待ちにする都の人々がいたのだろう。歳月を重ねて深みを増していく文化の行方に、旅人は思いを馳せた。