文化遺産の旅
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群馬県・富岡編



今回の訪問地は、群馬県。古くから栄えた生糸産業の文化を中心に、「絹の道」を紹介する。

旅の始まりは、沼田市・薄根の大クワから。樹齢およそ千五百年。養蚕の神と祀られる桑の巨木だ。

声の旅人・寺田農は、続いて六合赤岩の集落を訪れた。養蚕農家が立ち並ぶ伝統的建造物群として、一帯は文化遺産に指定されている。蚕棚を持つ民家の内部は、他では見られない特徴的な構造だ。

クワとカイコが紡ぐ「絹の物語」は、碓氷製糸場へと結ばれていく。今も稼働する生糸工場だ。その製造工程は、自然の恵みがもたらす神秘性と、人間の知恵を重ねた機能美に満ちていた。

絹の道は、碓氷峠のめがね橋にも伸びている。かつて、生糸を運んだ鉄道の跡だ。今は廃線となっているが、施設は往時の面影をよく留めていた。周辺の発電所やトンネルも含めて、明治時代の貴重な文化遺産だ。

当時の息吹を求めて、声の旅人は旧富岡製糸場へ向かう。明治5年に建設された製糸工場の跡地だ。外観の赤レンガも荘厳だが、内部はさらに素晴らしい。工場には精密な製糸機が、寮にはモダンな調度品が並んでいた。絹の生産は、近代日本の発展を支えた重要な産業。静かな時の流れの向こうに、旅人は文明開化の産声を聴き取った。