世界の名画 ~美の迷宮への旅~

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ストーリー

パリに咲いた夭折の異邦人
モディリアーニ「赤いドアの前のジャンヌ・エビュテルヌ」

番組名

今日の一枚は20世紀初頭のエコール・ド・パリを代表する画家アメデオ・モディリアーニの最晩年の作品「赤いドアの前のジャンヌ・エビュテルヌ」。
生涯、人物画にこだわった彼の作品は面長な顔立ち、揺らめく様に引き延ばされたプロポーションなど、どこか謎めいた、不安定な世界観で彩られています。
独創的な表現の礎となったのは幼少の頃に見たイタリアの古典芸術。優美で調和のとれたルネサンス芸術と、危うい均衡を保つマニエリスムを融合し、自身の絵画へと昇華させたのです。
そして、彼の最大の特徴と言えば、瞳の無いアーモンド型の目。その原点は近代絵画の父セザンヌにありました。モディリアーニが絶えず持ち歩いていたセザンヌ作品を紐解いた時、彼の「瞳の無い目」の秘密が見えてきたのです。
現代において、稀代の肖像画家として知られるモディリアーニですが、当時は世間に受け入れられず苦悩の日々を送ります。貧困と持病に苦しむ中、自堕落な生活を送る日々。
破滅型の人生を支えたのは、今日の一枚のモデルでもある、最愛の妻ジャンヌでした。
赤いドアの前に佇むジャンヌは当時21歳。モディリアーニの子供を身ごもり、幸せの絶頂でした。しかし、作品の完成後、2人を待っていたのは絵画史上に残る最大の悲劇だったのです。
今回の地上の旅は20世紀初頭「エコール・ド・パリ」と呼ばれた異邦人画家たちが過ごしたパリの街へ。伝説のアトリエや、モディリアーニがピカソと絵画論を戦わせたカフェなどを訪れ、彼らの素顔に迫ります。
前衛芸術とは一線を画し、故郷イタリアの古典芸術を受け継ぎながら、他に類をみない画風を生み出した画家モディリアーニ。35年という短い人生を疾走した異端児の一途すぎる想いを感じて下さい。