世界の名画 ~美の迷宮への旅~
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芸術と信仰のはざまで苦悩する画家
グリューネヴァルト「イーゼンハイム祭壇画」
イタリアでルネサンスが最盛期を迎えた16世紀初頭、フランス、アルザス地方で衝撃的な祭壇画が生み出されました。情け容赦なく無残に傷つけられたキリストの体、悪魔が生みだす幻想に苛まれる聖人、神秘的な光に彩られたキリストの復活。時代を超えた個性的な11枚のパネルからなる、イーゼンハイム祭壇画です。強烈な色彩と光の表現は、二十世紀に花開く表現主義を先取りしたと思えるほど斬新です。
作者のグリューネヴァルトはデューラーやクラーナハと並んでドイツ・ルネサンス3大巨匠の一人に数えられるほど有名な画家でした。しかし彼の名はその死後、完全に歴史の闇の中に消え失せてしまいました。その謎を解く鍵は彼の波乱万丈な人生にありました。
グリューネヴァルトは、ドイツにおける最高位の聖職者、マインツ大司教に仕えた画家です。もともと強い信仰心を持っていたグリューネヴァルトは、宗教画の傑作を次々と制作していきました。しかしイーゼンハイム祭壇画を完成した直後、新しいマインツ大司教に権力の亡者が任命されたことから彼の人生の流転が始まります。グリューネヴァルトの身に降りかかった残酷な運命と彼が下した究極の決断とは?
番組では、その謎を探るために現存するグリューネヴァルトの数少ない作品を追い求め、アシャッフェンブルクやシュトゥパッハなど、観光旅行ではあまり行く機会のないドイツの小さな町を訪れます。またイーゼンハイム祭壇画があるフランス、アルザス地方の風土にも着目。クリスマスツリー発祥の地といわれるアルザス地方の名産品に目をむけると意外な歴史が見えてきました。