世界の名画 ~美の殿堂への招待~
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動乱の地に花開いた名画 ブリュッセル ベルギー王立美術館
ブリュッセルにあるベルギー王立美術館の二階に、ひときわ目をひく一枚の絵があります。この地で絵画が黄金時代を迎えた17世紀、ヨース・デ・モンペル2世とフランス・フランケン2世という2人の画家が共作で描いた「バベルの塔」。人々が天まで届く塔を建設しようとしたために、その驕りに怒った神が、それまでひとつだった人類の言語をバラバラなものに変えてしまったという旧約聖書の説話です。バベルの塔は、混乱と分裂のシンボルなのです。
実はこの作品が描かれた当時、この地が属していたネーデルラント(現在のベルギーとオランダ一帯)は、宗教改革に端を発する内乱の中で南北に分裂するという悲劇に見舞われていました。作品は、そんな故国の状況を象徴するものだったのです。
この印象深い作品を生み出したネーデルラントには、細密な描写と鮮やかな色彩を特徴とするフランドル絵画の伝統がありました。
この絵画を花開かせたのは、貿易と毛織物産業によって築かれたこの一帯の富でした。しかし一方ではその豊かさゆえに、隣国からの侵略を招くなど、この地は激動の歴史をたどることになります。
それでも絵画が廃れることはありませんでした。むしろ過酷な時代の変遷を糧としながら、フランドル絵画は300年にも渡り進化し続け、ヨーロッパ中を魅了していくことになるのです。
番組では、中世から絵画黄金の17世紀に至るまでの、フランドル絵画の名作の数々を鑑賞しながら、作品を生み出したベルギーの歴史に思いを馳せます。ご紹介するのは、ウェイデン、メムリンク、ボス、ブリューゲル(父)、ルーベンス、ヴァン・ダイクなど、美術史に名を残す巨匠たちの作品です。さらに地下に眠る王宮の遺跡や、神学者エラスムスの家など、知られざるブリュッセルの名所にもご案内いたします。