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緑の惑星~地球進化の謎~ 3 草の時代
地球の姿を変えてきた植物の謎に、地質学者イアン・スチュアートが世界中を冒険しながら迫る全3回シリーズ。私たちの暮らすこの惑星を緑に変えた植物のすべてに迫る。シリーズ最後のイアンの冒険は、"草の闘いの歴史"を探る旅。
かつて恐竜がいた時代、何億年もの間、地球を支配していたのは森だった。陸地は樹木で覆われていたのだ。そんな世界にある挑戦者が現れる。それが草だ。もともとは小さな存在だった草が、徐々に力をつけ、この惑星を支配するようになっていく。そして、海の姿をも変え、動物の進化を促し、人類に文明誕生のきっかけをもたらしたのだった。イアンは、アフリカのサバンナやトルコにある人類最古の遺跡を巡り、草がどのように世界を変えていったのか、その謎に迫る。
昔、地球は森で覆われていた。大きな木が太陽の光を独占し、小さな草は陰でひっそりと生活していた。その圧倒的な力の差をひっくり返し、草が地球を支配するようになったのはなぜだろうか。地質学者イアン・スチュアートが、草の驚くべき歴史を解説する。
まず向かったのは、南アフリカのサバンナ。草は"燃えやすい"という特徴をいかし、支配を続ける木に戦いを挑んだ。火を味方につけ、自分もろとも焼き払うと、木よりも早く再生して勢力を広げていったのだ。草は木を制圧すると、次は動物に食べられてしまうのを防ぐために進化する。葉の周りを固いシリカで覆ったのだ。草を食べることができなくなった動物は絶滅するが、中にはそれに対抗するため、歯を進化させたものもいる。馬などが現代まで生き残っている動物だ。それらが排せつするふんの中には、草の成分シリカが含まれ、それが海に流されることで植物性プランクトンの珪藻(けいそう)が急激に増え、海の生物の栄養となり、大量の酸素を作り出したりするようになる。
また、アフリカのセネガルでは、草の上に暮らすチンパンジーに我々の祖先の進化を見ることができる。木の上から降りて地面での生活へと変化したことで、二足歩行が始まったのだ。そこには、地球上の植物の支配が木から草へと変わったことが大きく関わっている。
最後に訪れたのは、人類最古の神殿といわれるトルコのギョベクリ・テペ遺跡。これを建設した人々の食生活を支えていたのは、今日我々が「小麦」と呼んでいる草から作られたパンだった。突然変異で生まれた小麦は、穂が落ちにくく収穫が容易、種を取っておいて栽培することもできた。その結果、農業が始まりパンが作られるようになったのである。
最後にイアンは、草はどこにでもある身近な存在でありながら、私たち人間、そしてこの地球さえもコントロールしてきたのだと結論づける。