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野生のオオカミを探せ!~北米の大自然に生きる~ 2 夏
20世紀中頃に、カナダに追いやられた野生のオオカミの群れが、今、ワシントン州に戻ってきている。約70年ぶりに現れたこのオオカミを探すため、調査チームが結成された。野生動物カメラマンのゴードン・ブキャナン、生物学者のジャスミン・ミンバシン、オオカミ研究のエキスパート、アイザック・バブコックを中心とするチームは、カスケード山脈のベースキャンプを中心に、冬に引き続き夏の大自然の中で過酷な調査活動を続ける。
今回はカナダの熱帯雨林での1カ月に及ぶ観察で、オオカミが魚を獲る現場やカスケード山脈で子供のオオカミを発見するなど、貴重な映像を押さえることができた。また冬に引き続き、人間とオオカミの対立の歴史を体感するため、狩猟で生計をたてる人のオオカミ狩りに同行し、彼らの意見にも耳を傾ける。オオカミ研究の第一人者、ダグ・スミスも訴えるように、「人間とオオカミがうまく住み分けられる環境を作ること」がこれからの課題なのだ。
夏になると、調査チームは冬のベースキャンプから160Km南下。かつて目撃情報をもとに捕獲されたメスのオオカミに発信機が付けられ、ジャスミンはこの信号を頼りに空からの追跡を開始する。そして、このメスが何度も同じ場所に戻っていることを確認する。ジャスミンからの指示を受けてアイザックはその地点を目指し、メスが子供を産み育てる、森の奥の安全なエリア「ランデブーサイト」を発見した。
また、ゴードンはアメリカに入ってくるオオカミの大本の数を調べるため、カナダのブリティッシュコロンビア州を訪れた。熱帯雨林グレートベア・レインフォレストの川沿いで、オオカミに食べられたサケの残骸とフンを発見し、オオカミがそこにいることを確信。川沿いにテントを張り、昼夜を問わず1カ月にも及ぶ過酷な撮影を試み、ついに野生のオオカミが川から魚を獲る姿を撮影した。
アイザックはカスケード山脈に残り、そこに生息するオオカミを引き続き追跡調査した。遠吠えが聞こえた地点にカメラを設置し、3頭の子供のオオカミの撮影に成功する。
調査を通して、これまで手つかずの自然の中でしか生きられないと思われてきた野生のオオカミは、人のテリトリーの近くまで来ていることが分かった。人間とオオカミの対立の歴史を見るまでもなく、現在もそれを快く思わない人たちがいる。ジャスミンは狩猟で生計を立てる人のオオカミ狩りに同行し、その思いに耳を傾けた。2人は相反する立場だが、人間とオオカミとは共存できるという共通認識を持つことができた。オオカミ研究の第一人者ダグ・スミスも、「オオカミは決して残虐な生き物ではなく、生きるために効率的な狩りをしているだけ。人間が特定の動物を駆除するのは間違いで、オオカミと人間との住み分けができるような環境を考えよう」と解説している。
現在、アメリカ国内ではオオカミの群れは5カ所で確認され、西海岸ではその生育地が着実に南下し、カリフォルニア北部にまで及んでいる。ダグ・スミスは、200年後にカナダからメキシコまで、オオカミの生育地が広がることを夢見ている。