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「野生のエルザ」の真実
ライオンと人間の心の交流を描き、世界中に感動を呼んだノンフィクション小説で、映画にもなった「野生のエルザ」は、ライオンに対する人々の認識を変えた。エルザの死後も、エルザを育てたアダムソン夫妻は動物を野生に返す活動に生涯を捧げた。しかし「野生のエルザ」が人々を感動させてから40年以上経った今、ライオンは絶滅の危機にひんしている。アダムソン夫妻の人生を追いながら、原作小説や映画に描かれなかった、「野生のエルザ」の真実に迫る。
1956年、ケニアで狩りの監視をしていたジョージ・アダムソンは、襲いかかってきたメスのライオンを射殺する。しかしそのライオンには、生まれて間もない3頭の子どもたちがいた。ジョージは3頭を保護し、妻のジョイが待つキャンプに連れ帰る。夫妻は2頭を動物園に送り、残った1頭に「エルザ」という名前をつけて育て始める。エルザは2人の愛情を受け、すくすくと成長していく。やがて、2人はエルザを野生に返そうと決意。失敗を繰り返しながらも、2人はエルザを野生に返すことに成功。だが喜びもつかの間、エルザは感染症により、その生涯を終えた。
ジョイは、エルザを育てた体験談をまとめて出版。「野生のエルザ」は世界中の人々に感動を与え、ついに映画化される。主役を演じたビル・トラバースとバージニア・マッケナ夫妻は、この映画への出演をきっかけに動物を保護する活動を始めた。
撮影後、ジョージは映画で使ったライオンたちを、エルザと同じように野生に返すことに成功する。しかし、その中の1頭が子どもを襲いケガを負わせてしまったことから、違う土地へ移動しなければならない事態になってしまう。新たなキャンプ地で活動を再開したジョージが20年間で野生に返したライオンは、実に30頭を越える。一方、妻のジョイは、チーターやヒョウを野生に返す活動をしていたが、解雇したスタッフの手で殺害されてしまう。
1980年代になるとアフリカの人口は増加し、人間の暮らす土地がジョージのキャンプ付近まで迫ってきた。やがて人々は、家畜を襲う恐れがあると主張し、ライオンを殺し始めたのである。それだけでなく、人間同士の衝突も頻発。そんな状況の中でジョージは、盗賊に捕まったドイツ人を助けようとして、盗賊に射殺されてしまう。
ジョージの死から20年以上経った今、ライオンは絶滅の危機にさらされている。ジョージはこうなることを予測していたかのように、自伝の最後で、こう訴えている。「もし私が死んでしまったら、この先、いったい誰が、ライオンたちを守っていくのだろうか」と。