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ストーリー

動物たちの進化の謎に迫る! 1 クジラの起源

現存する動物たちの起源とその進化の過程に迫る3回シリーズ。第1回目は、海の王者"クジラ"の進化の謎をひも解く。
約5千万年前に存在したオオカミのような陸上生物、約4千9百万年前に現れた水陸両用の動物。約4千6百万年前の海を自由に泳ぎ回っていた動物…。特徴的な耳の構造から、それらはいずれもクジラの祖先と判明した。わずか4百万年の間にクジラは環境変化に適応し、陸上から海で生きられるように進化したのだった。さらに、約3千万年前には超音波による探知能力を発達させ、深海へ潜る能力を獲得。その比類なき適応能力は現代のクジラに受け継がれている。

今日、地球上に生息する動物たちの起源とその進化の謎に迫る3回シリーズ。第1回目は、化石を頼りにクジラの進化の謎をひも解く。
最初の鍵は、パキスタン中央のスライマン山脈で発掘された約5千万年前の動物の化石だ。かつてこの地域は海の底であった。オオカミのようなその動物は、完全な陸上生物だった。次に出土したのは、水陸両用の体を持つ約4千9百万年前の動物の化石。どちらの化石も耳に特徴的な構造を持ち、クジラの祖先だと判明する。"歩き、泳ぐクジラ"、この2つの化石発見により、クジラの進化の過程を知ることになったのである。
クジラの祖先は気候変動によるエサ不足を背景に、陸から水中へと進出した。しかし、この時期には海水ではなく淡水を飲んでいたことがわかっている。また、骨格からは大きな頭と体に対し後ろ足が小さく、うまく泳げなかったこと、陸上でも鈍い動きしかできず陸にも海にも不向きであったとされる。そして、約4千6百万年前の化石の発見から、地殻変動で浅く豊かな海ができると、クジラの祖先は完全に海で生活するようになる。この時期の化石は、クジラの体が速く泳ぐ能力と海水に耐えうる機能を備えた体へ進化したことを物語っていた。
その後、クジラの祖先は大型種と小型種に分化したが、約3千5百万年前の気候変動により大型種は絶滅。生き延びた小型種は、約3千万年前にはサメを避けて北方へ移動し、エサの乏しい環境で超音波による探知能力を発達させた。こうして進化を遂げたクジラは、現在地球上に80種以上。それぞれが環境に適応して特異な能力を発揮、世界中の海で暮らしている。