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ストーリー

世界のランドマーク その裏側に迫る!
インド・白亜の霊廟(れいびょう) タージ・マハル

2010年、イギリス連邦に属する国や地域が参加する「英連邦競技大会」がインドで開催された。競技大会に備えて始まったのが、約400年前に建てられた「タージ・マハル」の修復作業。しかしモスクの上のドームや庭園、石造物の修復を指揮するインド考古調査局は、作業のスピードより質を重んじているため、期限に間に合わせることができるかどうか雲行きがあやしい。はたして世界中が注目する競技大会までに作業を終え、観光客を迎えることができるのだろうか。

世界で最も有名な白亜の霊廟(れいびょう)「タージ・マハル」。インドの象徴ともいえるこの建築物は近年、酸性雨や排気ガスによる損傷が問題視されている。2010年10月、インド北部の都市デリーで開催される「英連邦競技大会」の開始までに、修復しなければならなくなった。タージ・マハルを訪れる観光客は、1日約2万人。競技大会中はその倍になると予想されている。
迅速な修復作業が求められるなか、タージ・マハルを管理するインド考古調査局は「質を求める作業に時間制限は
設けられない」という考えを堅持。近代的なレーザー測定が進む一方、職人たちは古くからの方法で時間をかけて作業した。技術と忍耐力を要するその方法は、材料を手で混ぜるというもの。通常は乾燥した冬に行う作業のため、雨が降ることを心配していた。
雨を恐れるチームは他にもある。大理石の汚れを取るチームは、大理石の表面に粘土を塗り、粘土に汚れを吸着させてきれいにするため、塗った粘土は少なくとも1週間はそのままにしておかなければならない。その間肝心なのは、乾燥させておくこと。湿気は大敵だ。
逆に、雨を待ち望むチームもあった。タージ・マハルの庭を美しい花で埋め尽くそうと考えている庭園作業チームだ。庭園チームにとって、雨が降らないことは深刻な問題。そんなとき、雨を待つ庭園チームの願いが通じ   
たかのように突然雨が降り始める。恵みの雨と喜ぶが、あまりに激しい雨によって植物が被害を受けてしまう。ほかのチームも作業に遅れが出るが、職人の意地で遅れを取り戻していく。
そして最新のレーザー測定により、タージ・マハルが伝承のとおり前後左右対称、ほぼ完ぺきなシンメトリーであることも判明した。
10月。英連邦競技大会は無事、デリーで開催された。タージ・マハルの修復は間に合ったのだ。修復作業に携わった人々は「観光客の感嘆の声で、数ヶ月にわたる苦労が報われた」と語った。