ありがとう
放送内容
「下條アトム ~不器用な父と息子の10年目のありがとう~」
犯罪者役から「仮面ライダー響鬼」では団子屋の主人などテレビドラマ、映画、舞台に出演し、ナレーターとしては「世界ウルルン滞在記」、声優としてはエディ・マーフィーの役柄など、幅広い活躍で知られる俳優・下條アトム(67)。
下條アトムが今「ありがとう」を伝えたい人。それは亡くなった父・正巳だ。下條正巳は戦後、新劇の舞台人として多くの観客を魅了。59歳にして、国民的映画「男はつらいよ」シリーズの “おいちゃん”役をつとめ、20年以上にわたってお茶の間に愛された役者だ。幼い頃、父の楽屋に行くことが楽しみで、役者が化粧する姿、ドーランの匂い、楽屋で繰り広げられる日常とかけ離れた異次元の世界が心地よかった少年は舞台の世界を身近に感じて育つ。そして次第に父と同じ舞台に立ちたいと思うようになっていった。気付くとこの歳まで役者の道を突き進めたのは、父が敷いてくれたレールに乗せられて、遊ばせてもらっていたようにも思う。家ではいつも苦虫を噛み潰したような顔をして、余計なことは一切言わない放任主義だった父。しかし年を重ねた今、父の言葉が胸に響く「役者である前に、まずは人としてきちっと生きろ」。病気や離婚、心配をかけてきた下條が父・正巳、俳優・下條正巳を改めて振り返り、思い出の地を巡る。そして下條にはこの節目の年にもう一つ見つめ直したい人との関係がある。離婚して負担をかけてしまった一人娘に対する後悔の気持ち。今年、結婚した娘にこれまで言えなかった思いも伝えたい。数少ない記憶を頼りに、神奈川県三崎で父と写真を撮った海辺へ。父の面影が見え隠れする葛飾柴又を散策。大怪我をした幼い息子を血相を変えて病院へ走った父の腕のぬくもり…。場所、場所で思い出すのは無口だった父の息子への不器用なまでの愛情。父が他界して10年、最期の夜に果たせなかった詩の朗読を墓前に捧げ、感謝があふれ出す。