トム・ワトソンx北野武 奥深きゴルフ ~世界で戦うための戦略~

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「レジェンド・トム・ワトソンと、世界の北野武がついにペブルビーチで対面」

2013.12.11 米国カリフォルニア州ペブルビーチ

ゴルファーが憧れる、かの17マイルドライブがまもなくペブルビーチにさしかかった頃、北野武は唸った。 「スケールが違う」あとは言葉が出てこない。
そして、「老後はここに別荘を買って、毎日ゴルフするのもいいかな。」と徐々に本気ムードが増す。誰もが憧れるゴルフリゾート。ペブルビーチの魅力に、のっけから、すっかりはまった様子なのだ。
ゴルフ前日のウェルカムディナーの始まる前、北野の緊張ぶりは手に取るように伝わってきた。

そこへ、入ってきたトム・ワトソン。ついに世紀の対面が実現だ。
「下手くそだけど、怒らないでください。」
「大丈夫。ボクが直してあげるから。」
「私の名前は『北野武』だけど、あなたのことは何と呼べばいいのですか?」
「『トム』でお願いします。あなたは?」
「たけしで。」
次の瞬間にはお互いを「トムさん」「タケシ」と尊敬と愛情を込めて呼んでいた。

今回の企画の話を受けて北野はこの数か月、根を詰めてゴルフをやってきた。
企画の主旨は、『世界一のコースで、ゴルフをしながら人生を語る』というもの。しかし、北野の気持ちは、「恥ずかしいゴルフをすれば、失礼に当たる」というレジェンドプレーヤーへの配慮だった。

朝の練習場、スタート前の最後の練習。北野武の打つ球は右に出る。 そこへトム・ワトソンが遅れて到着。
「タケシ、どうしたんだい?」
「トムさん、ドライバーが右に行くんだよね」
すると、少し練習を見たワトソンは北野のグリップを直す。たちまち、北野の球はドローボールの軌跡を描き、ナイスショットに。北野はまるで魔法にかかったような表情だ。
しかし、そこは世界の北野、次の一手で最大のいたずらを仕込んだ。
「トムさん、きのう言っていた飛ぶクラブがあるのだけれど、使ってみる?シャフトもトムさんの仕様を調べて、作ってもらったんだ。」
「タケシ、これはいい顔をしている。打ってみるよ。」
ドライバーを手にしたトム・ワトソン。関係者を含めて一同が見守る中、放たれた打球は300ヤードショットで林の中に消えていった。
「タケシ、これはいい。きょうのラウンドで早速使ってみるよ」
トム・ワトソンのゴルフバッグに「飛ぶワトソン」。契約上大丈夫だろうかと思う関係者の心配をよそに、注目のラウンドがスタートしたのだ。

ラウンド中は金言の連続だった。
「タケシ、ゴルフをやる時に、大切な3つのことは何だと思う?まず、何を考える?」
「真っ直ぐ打つこと!」
「違うんだ。まずボールのライを見る。」「次に距離。でもこれはグリーンまでいくら、ではないよ。ハザードを越えるために何ヤードとかのチェック。そして風のジャッジ」
そして、ワトソンはさらに言う。
「レッスンはいろいろ複雑になって行っているけれど、シンプルが一番さ。人生もそうじゃないか。」
これには世界の北野も思わず本当に脱帽だった。

この日のペブルビーチは2,3日前がうそのような温かさ。風もほとんどなく穏やかな天気の中、ふたりの濃密な時間が流れた。そして、OUT9ホールの後半に差し掛かった頃、名物ホールの7番にふたりがやってきた。このホールは海に向かって突き出た半島のようなところにある打ち下ろしのパー3。
「タケシ、打ち下ろしだとどのくらいで計算する?」
「5ヤードマイナスかな」
「正解!5~6ヤードだね」
いいコンビになってきた。そこでワトソンから「このホールでニアピンをやろう!」の申し出。果たして結果はどうなったのか?これは番組を見て楽しんでいただこう。

そして迎えた最終18番パー5。
1982年の全米オープン、17番で1打リードしたトム・ワトソンはスプーンでティーショットを放った。感慨深くそのことを語りながら、ドライバーで放ったティーショットが火を噴いた。64歳という年齢を感じさせない、290ヤードを超える見事なティーショットだった。北野武は、ティーショットが右のバンカーへ、しかし、そこからナイスリカバリーで、難関18番でバーディーが取れるかもしれない好位置につけた。
「タケシ、ライを見て、距離、風だよ」
心の中で復唱し、ボールを打った北野武。そしてボールは見事にグリーンをとらえた。心からの祝福を送るトム・ワトソンと子供のように喜ぶ北野武。ペブルビーチに優しい時間が流れていた。ゴルフのプレーと対談を終えた北野武は「まだまだ聞きたいことがあった。」と、過ぎ行く時間を惜しんだ。