辰巳琢郎の家物語 リモデル★きらり
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早稲田の有名な教授が設計し 教え子が甦らせた代沢の家

東京都世田谷区代沢。平日でも若者が集まる下北沢駅前の雑踏を抜けて10分程歩くと、「文学の小路(こみち)」と呼ばれる、住民たちの憩いの場があります。かつては川が流れ、緑豊かなこの地には、坂口安吾や三好達治など、多くの文人たちが暮らしていました。

今回訪ねたD邸は、築24年の木造3階建てのお宅。元々は、数多くの賞を受賞した建築家の石山修武さんが設計した家でした。音楽プロデューサーのご主人と出版関係にお勤めの奥様は、以前近所で暮らしていましたが、愛犬の散歩中にこの家に出会いました。有名建築家の作品であることや、借景が素晴らしい立地にも関わらず、相場の3分の2という安い価格だったため購入を決意。しかし、その安さにはある理由がありました。

以前はある有名な作家さんが住んでおり、その時に多くの犬や猫を飼っていたため、柱や床など家全体が強烈な臭いだったのです。臭い除去専門の業者に頼んでも解決できず、奥様の大学時代の友人で、石山さんの教え子だったという建築家に相談。まずは臭いがついていた柱や壁は骨組以外全て取り除き、残った木材にはアメリカから取り寄せた脱臭スプレーを吹き付け、大型扇風機で臭いを飛ばすなど、3か月かけて徹底的に脱臭作業を行いました。また、天井や壁の裏には消臭効果が高い炭を敷き詰めました。

臭いの次は、暗かった部屋全体に光を採り込む事でした。まず、玄関土間は以前、納戸と仕切られて狭く、圧迫感がありましたが、納戸を取り払い、新たに畳を敷いた小上がりに。ゲストの荷物置き場や、茶室など色々と便利に使えるスペースになりました。また、玄関は消臭のために天井を取り外したのをきっかけに、随所に四角いアクリル板をはめ込み、2階からの光が差し込むようにしました。2階のリビングは、臭いがひどかった床は全て取り外し、愛犬が滑りにくいナラ材のフローリングに。サンルームとの仕切りは壁でしたが、暗くて圧迫感があったため、ガラスに変えることに。光を取り込みつつ、空間の広がりを演出しました。春には桜が満開になる美しい緑道の借景を見ながら寛げるようになりました。

地下室は、以前は前の住人である作家の仕事部屋とサロンを兼ねていましたが、今回入口に隙間をなくす気密性の高い扉を設置。また、天井に吸音ボードを貼るなど、しっかりとした防音対策を施して、ご主人の仕事にも使える音楽スタジオに変えました。プライベートではDJの友人が遊びに来て一緒に音楽を楽しむなど、ご主人念願の空間となりました。臭いという大きな問題をみんなで協力して解決し、理想の空間を手に入れたリモデルとなりました。

設計担当:古谷デザイン建築設計事務所
http://www.furuyadesign.com/

 
 
 
 

【平面図】

■地下1階

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■1階

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■2階

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■3階

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