辰巳琢郎の家物語 リモデル★きらり
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職人技が甦らせた昭和のはじめの高円寺の家

JR中央線で新宿から2駅目。高円寺は古くからの商店街が残る活気あふれる街です。地名の由来になった曹洞宗高圓寺は、徳川3代将軍家光が鷹狩りの際に雨宿りで立ち寄ったのをきっかけにその名が広く知られるようになりました。毎年8月に開催される高円寺阿波踊りには、約100万人が訪れ、街の一大イベントになっています。
今回は、築80年を超える古い日本家屋を購入し、リモデルされた建築家ご夫妻のYさんのお宅を訪ねます。元々同じ設計事務所の先輩と後輩だったYさんご夫婦は2006年に結婚。以前は都内のデザイナーズマンションを借りて暮らしていましたが、独立した奥様の建築事務所を兼ねた家を新築しようと考えて、土地を探していたところ、元々和菓子屋だったこの家に出会いました。各所に使われている立派な材や、およそ4mの天井高スペースなど、可能性を感じたというYさん。新築をやめて、職人の技を借りながら、元の建物が持つ力強さを復活させることをテーマにリモデルしました。
大通りに面した入口から入る、事務所兼リビングダイニングは、和菓子屋の店を畳んだ後に家人がLDKとして使っていたので、クッションフロアが敷かれていました。そこを和菓子屋さん時代と同じ土間敷きに戻し、多目的に使える空間に。床は、昭和30年頃まで駅やホテルの床などに使用されていた、人造石研ぎ出し仕上げで、目地の無い一枚の美しい大きな面を作り、床暖房を施しました。また、壁には、年月を経た風合いのある柱に合うように炭を混ぜた漆喰を施し、建築当初の雰囲気を再現しました。
6帖と4帖の2部屋に分かれていた1階のスペースは、暗く狭かったため、間仕切り建具を撤去し、一部屋につなげ、キッチンと書斎のスペースに。中央には長さ3.8mのキッチンカウンターを設けました。床、カウンターは土間と同じ人造石研ぎ出し仕上げで全て統一しました。また、浴室の壁を撤去し、全面ガラス張りにして、部屋の一部のように見せて広さを演出しました。
2階は、和室が2部屋ありましたが、間仕切りの襖を取り外し、桐のフローリングを敷いて、開放的な空間へと変わりました。床の間には飾り棚を設置。扉に羊革の型押しや、綺麗な紫色に染められたシルクの布を使う事で、部屋の雰囲気を軽やかに見せる効果を出しています。古い家の持つ良さを残しつつ、モダンな雰囲気を見事に散りばめた、建築家ならではのセンスが光るリモデルとなりました。

設計担当:YUUA建築設計事務所
http://yuua.jp/ 

 
 
 
 

【平面図】

■1階

Before

After

Before After

■2階

Before

After

Before After