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2008年5月3日放送 「桶」

番組の104回目のテーマは「桶」。
豊かな森と、清らかな水の国。
自然と共に生き、その恩恵に育まれてきた日本人の暮らしを支えてきたもの。

それは桶だ。
日本の風土の中で生まれた、機能性に優れた道具。
桶は、伝統の味を作り出し、日本の食文化を支えてきた。

桶がもたらす豊かな暮らしと味の楽しみ。
桶づくりの味を楽しむもののひとつに、日本酒がある。
桶仕込みの酒にこだわり、極上のつまみを求める。
酒を楽しむことを知る人間こそが木桶の酒に惹かれる。
一度は捨てた桶仕込みを2003年に復活させた酒蔵がある。
創業元禄15年、「澤乃井」で知られる小澤酒造。

復活のきっかけになったのは、蔵の裏山にあった樹齢300年の杉の木。
寿命が尽きた杉の木を、切りたおすことになった時、その木で桶を作ることを思いついた。そして、古い杉の木、3本から真新しい2つの桶が完成。
膨大な手間と、失敗のリスクを負いながらも木桶仕込みにこだわったのは、人間が思うとおりにつくる酒ではない酒を作ってみたいという社長・小澤順一郎の想いがあった。こうして生まれた木桶仕込みの酒に、酒造りの原点を見た小澤はこの酒を「イロハ」と命名。ほのかな木の香り、独特の味わいは桶でなければ作れない。

便利で丈夫な生活の道具であると同時に、日本の食文化を作り出して来た桶。

機械で管理されていないからこそ、その味わいは個性的。
気まぐれな自然が生み出す、もうひとつの味の恵を桶で楽しむ。

それは木が与えてくれた最高の贅沢。