市長はムコ殿

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ストーリー

第2話  「家族議会」

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市長になった大将の生活は激変し、心休まることはない。議会で野党議員からの野次を浴び、マスコミからは好き勝手な記事を書かれ、義母の乙女が厳しく干渉する毎日だ。
「ムコ殿! 一家の大黒柱としてなっていません」
休日、遅くまで寝ていようものなら、容赦なく乙女に叱咤される。
大将が市長になったため、都内のマンションを売り払って秋吉家に引っ越してきたばかりだったが、乙女との軋轢は強く、真理はストレスを溜め込んでいた。
「前みたいに四人で暮らしましょう」
遂に真理が同居解消を切り出した。いつも生活のあらゆる場面でダメ出ししてくる乙女の威圧的な態度に辟易しているのだ。 「お母さんは人に強要してばかり。同居するにも、互いのプライバシーは守るべきよ」
19年間わだかまりを抱えていた親子である。そう簡単に氷が溶けるはずもない。

このまま同居を続けるか、マンションに戻るか。市長秘書の半田を議長として、家族会議が開かれた。最終的に決断するのは、婿養子でありながらも大黒柱である大将だ。
「家族の声は市民の声と思って、この問題をまとめなさい。いいですね」
乙女は大将に大黒柱としての心得を説いた。"家族も幸せに出来ない男が、市民を幸せに出来るわけがない"。その言葉が大将の胸に響いた。
真理も乙女も、意固地になってなかなか結論は見えない。プライバシーを優先するか、大家族での生活を優先するか。 「二世帯住宅がいいと思います!」
娘の鈴音(18)の提案であった。家族で生活しながらプライバシーを保つためには、確かに二世帯住宅が最善の方法である。そのために、歴史のある秋吉家をリフォームするというアイデアが、にわかに現実味を帯びてきた。
「僕はリフォームには反対です」
大将は、誠意を持って決断を示した。幼い頃、祖父母と共に暮らしたことで、多くのものが得られた。そんな経験を娘たちにもさせたいと思っている。
「僕たちが我慢すべきなんです。だって、お義母さんは僕の家族だから……」
見事な決断に、誰もが息を呑んだ。

「合格です。これは本日の試験でした」
立派な市長になるために乙女が大将に課した試験だったのだ。困難な課題にも逃げることなく決断を下した大将は、文句なしの合格であった。
家族の団結を深める結果となった秋吉家。ただ一人、真理だけはテストに利用されたことに納得がいかないのだった……。