映像歳時記 ~七十二候・旧暦が奏でる日本の美
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四十二候「禾乃ちみのる」(こくもの すなわちみのる)

二十四節気の暦は処暑!

「禾乃ちみのる(こくもの すなわちみのる)」
この「禾」とは、主に稲などの穀物の事を総称した言葉で「いね」「のぎ」とも読みます。そんな稲の穂が実り始める頃を表した候です。今回の候は、稲穂、甘えび、萩、猪、角館のお祭りなど、この季節の話題を楽しくお送りします。

稲は食料としての役割のほかに、藁として屋根の材料に使われる等、日本人の生活を幅広く支えてきました。この「いね」という言葉は、そんな人との関わりから、「生命」と結びつき、「生きる根」、「生根(いきね)」が転じたものだとも言われています。また「稲」という漢字の左側、「のぎへん」は、今回の候にある「禾(こくもの)」、つまり穀物である事を表しています。

この時期に旬を迎えるのが、甘海老です。身が太り、甘味も増し大変美味しくなります。本来の和名は「北国赤海老(ほっこくあかえび)」で、文字通り日本の北側の地方によく生息している事から名付けられました。そもそもなぜ「海老」はこのような漢字なのでしょうか?これは海老の長く伸びた触覚の部分が、老人の髭の様に見えた事から、海に住む長い髭を持った老人という意味で、この「海老」の漢字が用いられたと言われています。

萩はこの時期になると、赤紫色の可愛らしい花を咲かせます。比較的背の低い植物なので、花をじっくり観察でき、観賞用としても人気のある植物です。萩は、毎年古い株から新しい芽を出すという特徴がある事から「生芽(はえき)」が転じて「はぎ」となったと言われています。そして、秋に花を咲かせ、秋を代表する植物である事から、草かんむりに秋で「萩」となりました。

猪は、秋の季語として知られ、この時期、野生の猪はどんぐり等の木の実を求め、山の中を活発に動き回ります。「いのしし」の「い」は、猪の鳴き声が由来になっており、かつて、食用に出来る肉の事を「しし」と呼んでいた事に由来し、「い」と「しし」で「いのしし」となったといいます。猪は、まっすぐ走るのは得意ですが、曲がったり引き返したりする事が苦手なようです。そこから生まれたことわざが「猪突猛進」です。

秋田県仙北市では、毎年9月7日から9日にかけて「角館のお祭り」が行われます。この祭は、重要無形民俗文化財に指定され、約400年の歴史を誇る祭りです。最大の魅力が、「やまぶつけ」と呼ばれるもの。別の町内を練り歩いていた2つの曳山が出会うと、どちらが道を譲るかを交渉し始めます。この交渉が決裂した時に行われるのが、この「やまぶつけ」で、曳山同士を勢いよくぶつけて、その勝敗を決めるのです。