映像歳時記 ~七十二候・旧暦が奏でる日本の美
  • トップページ
  • バックナンバー
  • テーマ音楽
  • プレゼント

バックナンバー

十六候「葭始めて生ず(あし はじめてしょうず)」

二十四節気の暦は穀雨!

「葭始めて生ず(あし はじめてしょうず)」
葦が芽を出す頃を表した候です。山や野原だけでなく、水辺にも春がやって来たことを感じさせてくれます。 今回の候は、葦、田植え、玉ねぎ、ホトトギス、サザエなど、この季節の話題を楽しくお送りします。

関東では一般的に「葦」を「あし」と呼びますが、関西では「よし」と呼ぶ事の方が多いようです。これは、「あし」では「悪し」となり、縁起が悪い為、「良し」と呼ぶようになった事が由来だそうです。葦の真っ直ぐに伸びた茎は、軽くて丈夫な為、「茅葺屋根(かやぶきやね)」の材料として、利用されてきました。夏になれば「すだれ」、「葦簾(よしず)」としてもお馴染みですね。

この候から、二十四節気の暦は「穀雨(こくう)」になります。穀雨とは、穀物の成長を促す雨の事で、農業の世界では喜ばしい雨です。稲作の現場では、この頃から田植えに向けた準備が行われ、本格的な稲作の開始となります。田植えは、農業の世界では古くから最も重要な行事とされてきました。今でも、早乙女が「田植え歌」を歌いながら田植えをする「御田植祭(おたうえさい)」が、日本各地で行われています。

この時期の新玉ねぎは、みずみずしく甘味も多く、他の時期の玉ねぎよりも食べやすい為、大変おすすめです。 『玉葱の いのちはかなく 剥かれけり』 こちらの句は、俳人・久保田万太郎が詠んだもので、玉ねぎが一枚一枚剥かれていく様子を、命の儚さと表現しています。玉ねぎの悲哀を感じさせる面白い句ですね。

ホトトギスは、夏の季節の到来を告げる、代表的な渡り鳥です。春のウグイスとならんで、季節の「初音」として人びとにその鳴き声を待たれました。また、その年に初めて聴くホトトギスの鳴き声は、「忍音(しのびね)」と呼びます。オスのホトトギスは、けたたましい鳴き声が特徴で、古くは、この鳴き声が「ホトホト」などと聞こえていた事から、ホトトギスの名が付いたとも言われています。

サザエは、水温が上がるこの時期になると活発に動き出しはじめ、夏の産卵へ向け、栄養を蓄えるため、大変美味しくなります。サザエの「ササ」は「些細な」といった言葉もあるように、小さいことを意味し、「エ」は家を表していると言われ、海の中の「小さな家」がサザエの由来とされています。確かに、サザエにとってあの貝殻は、家そのものですね。