SHISEIDO presents エコの作法
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2012年3月30日・4月13日放送
2014年4月25日放送
「廻る×島」

島国、日本。
世界の人々がそう呼びならわす通り、私たちの国は、6000をゆうに超える島々から成り立っています。
そのなかに、幾世紀ものあいだ、島ならではの「美しい暮らし」と、「豊かな文化」を花開かせてきた島があります。
瀬戸内海に浮かぶ、小豆島。
日本で数少ない「オリーブの産地」としても知られるこの島には、その美しい風景の裏に……
島で生きる人々が辿りついた、数多くの「知恵」が潜んでいました。
「廻る」。
自然と人との幸せなサイクルをつくる数々の「知恵」。
それは、島国に暮らす、私たちのヒントにもなるはず。
一足早く春が訪れた小豆島へ…
美しいアイディアを見つけに行きます。

今回の舞台となるのは、瀬戸内海、香川県沖に浮かんだ小豆島。
古来より小豆島は「塩」の産地。
その伝統は今も受け継がれています。
島伝統の塩づくりは、日光と海風を利用したこれ以上ないほど、シンプルな仕組み。
「塩」を使って生まれた小豆島を代表する名産物は、長い時を越え、生き続けていました。
400年ほど前、豊富な「塩」を利用して始まった、小豆島の醤油づくり。
小豆島の醤油づくりに欠かせないのが、ずらりと並んだ「木の樽」。
木に住み着いた酵母は、やがて醤油蔵全体に広がっていきます。
その酵母が、小豆島の上質な醤油を育ててきたのです。
「佃煮」。その発祥は…厳しい時代を生き残るための知恵でした。
それまで捨てていた芋のツルを、醤油で佃煮にして食糧難を乗り切ったのです。
塩、醤油、佃煮…繋がっていく自然の恵。

山の斜面に広がる、棚田の絶景…。
室町時代につくられたとも言われる「中山千枚田」。
島の中央部、山々に囲まれた「中山地区」にあります。
そもそも小豆島は、雨の少ない島。
しかもここ、中山地区は傾斜地のため雨水が残らず、常に深刻な水不足に悩まされていました。
そこで、たまたま湧き出ていた貴重な水を最大限に利用しようと、棚田がつくられたのです。

限りある水を有効に生かすため必要だったのが…
地域一体となって協力し合う知恵。
そんな、人々の強い結びつきが分かるものが、棚田の真ん中に建っていました。
中山春日大社。五穀豊穣を祈願するための神社です。
ここで年に1回、収穫時期に行われる歌舞伎では…
見る人はもちろん、演じるのもすべて地元の人。
農作業以外の、こうした人々の繋がりが棚田を支えてきたのです。
知恵と工夫で限られた水を分かち合い、不可能を可能にしてきた歴史があるのです。作る人、食べる人、すべての人の協力があって、千枚田はようやく実りの秋を迎えることができるのです。

小豆島の風物詩……名産品のひとつである、素麺。
その素麺は、小麦、塩、水を使って、シンプルに手作りされる高級品。
小豆島の素麺に欠かせないものが……ごま油です。
麺を伸ばしながら、表面にごま油を塗り込む。
これで、くっつき難くなり、風味がよくなるとも言われます。
原料のゴマは、雨の少ないこの島でも強く育つ作物。
島の乾いた空気が、そうめんとごま油、2つの恵みをもたらしたのです。

「石の島」とも言われる小豆島。
小豆島の花崗岩は「小豆島石」とも呼ばれ、とても固いといわれています。
大きな石を切り出せるため、とても貴重な、「種石」と呼ばれる巨石。
他の地域では、なかなか見られないといいます。
固く大きな小豆島石は昔から様々な場所に使われてきました。
大阪城の石垣、京都の路面電車の敷石や、皇居の石橋など、様々な場所で使われています。

「オリーブ」。この島ならではの自然を感じさせる風景のひとつ。
明治40年、海外から輸入され、いくつかの地域に植えられたオリーブですが、残ったのはここ、小豆島だけ。
その理由は……
地中海のような「日当たりの良さ」。
そして、外から島にやってきたものを守ろうという人々の努力でした。

外国から来たオリーブが、様々な知恵と工夫によって今ではこの地に欠かせないものとなりました。
その背景には…
外からやってきたものを柔らかく受け入れ、自分たちのサイクルに組み込む、島の人々の気質があったのです。
剪定が終わったオリーブ。その葉を使って……
美しい色を生み出す人がいます。
オリーブ染色家の、高木加奈子さんです。
オリーブで染めた糸を使って天然のぬくもりを感じられるものを作っています。

自分を職人ではなく、ただただオリーブを愛する島民の一人だという高木さん。
人の心も、オリーブの美しい色に染まります。

小豆島は、かつて空海が修行し、いくつもの霊場がつくられた「信仰の島」。
自分を見つめ直したい…多くの人々が、この島へ「お遍路」にやってきます。

お遍路で巡る霊場は、「小豆島八十八カ所霊場」と呼ばれています。
祈りを終えた人が、本堂から別の建物へ。
くつろぐ巡礼者たちの前に出されたのが……うどん。
この習慣は、「お接待」と呼ばれるもの。
島の人間は、お遍路にやってきた人に、無償で食べ物などをふるまうのです。
このお接待は、島を訪れた人を受け入れ、もてなすと同時に…
島の人々自身が生きていくための知恵にもつながっていたといいます。
受け入れ、溶け合うこと……
はるか時を超え……
人と自然とが渾然一体となって生まれた小豆島の「知恵」の数々。
それらは、幸せを生み出す大きなサイクルのなかで、「古き良きもの」と溶け合いながら、島でゆっくりと廻り続けてきました。

波花堂

住所:香川県小豆郡小豆島町田浦甲124番
電話:0879-82-3665

ヤマロク醤油株式会社

住所:香川県小豆郡小豆島町安田甲1607
電話:0879-82-0666
http://yama-roku.net/

小豆島食品株式会社

住所:香川県小豆郡小豆島町草壁本町491-1
電話:0879-82-0627
http://kelly.olive.or.jp/shop/shimasyoku/index.html

中山千枚田

住所:香川県小豆郡小豆島町中山

わが家の手延べ 平井製麺所

住所:小豆島町西村甲1912
電話:0879-82-1791

かどや製油株式会社

http://www.kadoya.com/

田村石材株式会社

電話:0879-84-2214(代)
http://www.tamura-stone.co.jp/

小豆島オリーブ公園

住所:香川県小豆郡小豆島町西村甲1941-1
電話:0879-82-2200
http://www.olive-pk.jp/

オリーブ染め工房 木の花

住所:香川県小豆郡小豆島町草壁本町439-1
電話:0879-82-5991

八十八番 子安観音寺

住所:香川県小豆郡土庄町大部甲2040
電話:0879-67-3006
http://www.shiawasemeguri-shodoshima.jp/koyasu/index.html

島宿 真里

電話:0879-82-0086
http://www.mari.co.jp/home.html

ジェフ・バーグランド(京都外国語大学教授)

<プロフィール>
仏教に憧れ日本に来日。専門は異文化コミュニケーション。
外国と日本の文化の違いだけでなく、男女、年齢、障害者と健常者などさまざまな文化間コミュニケーションについて研究。「日本から文化力」「遠くから見たNIPPON、近くから見た世界」などをテーマに、お互いの文化を理解するために必要なコミュニケーション方法について、企業、行政、PTA関係などでも講演多数。近著に、東日本大震災後に届いた1通のメールをきっかけに執筆した「受ける日本人 繋がる日本人-いま世界に伝えたい受信力」がある。日本人の受け入れる心と繋がる文化こそ、日本人の力であるとメッセージを送っている。
趣味は尺八、囲碁、ジョギング、掃除など様々。現在は、160年前の江戸時代後期に建てられた京都鴨川沿いの町家に暮らす、日本人以上に日本の文化を愛する一人でもある。