SHISEIDO presents エコの作法
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2011年10月7日・28日放送 「活かす×稲」

秋…
風景がひときわ陰影を増すこの時期、山里は、黄金色に染まります。
実るほど、こうべを垂れる稲穂かな…
そう…いままさに、収穫の季節。
大地の恵みに感謝を込めて…
遠い昔から、私たちが繰り返してきた、命の営み。
植えて、育てて、刈り取って…
米という文字には、八十八回の手間暇をかける…という意味が込められていると言います。
それは、ある意味で自然と力を合わせる共同作業。
共生の在り方…
米が庶民の食べ物となってから、実はまだ歴史が浅いことをご存知でしょうか。
籾殻も、糠も、藁も、何一つ、捨てるトコロのない稲…
そこに、究極のエコロジーが息づいていました。
稲、活(い)かす
私たちの暮らしと、分かちがたく結びついてきた、稲の物語です。

新潟県、佐渡島…
面積は東京23区の、およそ1・4倍です。
米どころ…と呼ばれるように、佐渡では米作りが盛んに行われています。
平野部はもちろんですが、山の斜面を利用した、棚田や、あるいは、海沿いギリギリの田んぼも…
ここ佐渡では米作りに発揮した、日本人の、「知恵の多彩さ」を見ることができます。
文化の根本…
先人たちは、稲作に、気候風土を巧みに活かしてきました。

佐渡島の真ん中に広がる、国仲平野。
近年、この一画で進められてきた、有機栽培の稲作が、大きな注目を集めています。
無農薬の稲作に取り組んでいる、齋藤真一郎さん。
かつては農協で働いていた齋藤さんが、米作りに専念するようになったのは13年前でした。
けれど、初めから無農薬だったワケではありません。
大きな転機となったのは一羽の鳥との出会いです。
国の特別天然記念物、トキ…
行動半径が限られるトキは、近くにエサ場がなければ生きていけません。
以前は田んぼがエサ場でした。
しかし、農薬や除草剤の普及で、田んぼから他の生き物が激減した昭和30年代トキは姿を消していったのです。
トキを育むような田んぼ作り…
他の生き物を拒まない稲作によって、大地には様々な命が帰ってきたのです。
稲作もまた、自然の一部を人の為に、「いただく」行為にほかなりません。
トキをはじめとして、多様な生き物の揺りかごとなるような稲作…
その在り方が評価され、今年、世界農業遺産に認定されました。

岩首地区には、江戸時代の姿を今にとどめる棚田があります。
大石惣一郎さんは、先祖から受け継いだ田んぼで、慈しむように稲を育ててきました。
今も昔も変わることのない、稲への想い。
秋色の田んぼに、ふと心癒されるのは、私たちのDNAに刻まれた稲作文化の記憶が刺激されるからかもしれません…

新潟県糸魚川市
今は失われつつある、そんな伝統を、未来に残そうとする人に出会いました。
橋立功次さんです。
父親の代から、素朴で頑丈な藁細工を手がけ、その魅力を訴えてきました。
農家では、野良仕事が出来ない冬場、藁を使って生活に必要な道具を作っていました。
橋立さんは、地元のお年寄りの手を借りてその時代を再現しています。

新潟、佐渡島…
米を材料にした酒造りは私たちが胸を張れる文化のひとつです。
酒造りに憧れて、この地に移り住んだのは、佐々木邦基さんです。
春から秋にかけては、自分の田んぼでお酒の原料となる米を作り、秋から春にかけては酒造りに没頭するそんな日々を、もう10年あまり重ねてきました。
麹の生育状態と、その時の温度や湿度様々なデータを記録して、仕上がりの味を調整しているそうです。
佐渡島には、酒粕でふぐの毒を消す、伝統の製法があります。
「ふぐの子の粕漬け」
はじめの2年間は塩に漬け、さらに1年間、酒粕につけ込みます。

食べ物を無駄にしない…
その要に、米糠や酒粕があるのです。

アスファルト・ジャングル、東京…
しかも銀座に、水田があると言ったら信じてもらえるでしょうか。
そこはビルの屋上です。
酒蔵メーカーのビルで稲を育てているのは、ここに勤めている小田朝水さんです。
農家で生まれ育った小田さんは米の大切さを都心から発信したいと、屋上の有効利用を提案しました。
出来るだけ自然の環境に近づけて毎日のように成長を見守ったと云います。
ご近所の小学生が、田植えの体験にやって来たことがありました。
力を合わせるからこそ、人と人の触れあいが生まれる。
…稲作には、そんな側面があるのです。

モノの豊かさは、必ずしも、心の豊かさとは比例しません。
一切の無駄を出さない稲を大切にし、五穀豊穣に祈りを捧げた先人たち…
その生き方にこそ、いまという困難な時代を切り抜ける、大きなヒントが隠されているような気がします。

はしだて

住所:〒949-1337 新潟県糸魚川市大字桂604-1
電話:025-566-2978
FAX :025-566-3088
http://www.hashidate-dento.co.jp/official/

加藤酒造店

住所:〒952- 52-6511 新潟県佐渡市沢根炭屋町50
電話:0259-52-6511

魚処かすけ

住所:新潟県佐渡郡佐和町窪田107
電話:0259-57-3581

須田嘉助商店 鮮魚センター

住所:新潟県佐渡郡佐和町窪田107
電話:0259-57-3571

白鶴酒造株式会社

住所:〒104-0061 東京都中央区銀座5丁目12番5号
電話:03-3543-0721
FAX :03-3545-319
http://www.hakutsuru.co.jp/

ベリッシモ・フランチェスコ(BELLISSIMO Francesco)

<プロフィール>
ローマ(伊)出身。イタリア料理研究家、デザイナー、コラムニスト。日本とイタリアの文化の架け橋的な役割で活躍、イタリアのファッション・スポーツや観光などその他ETC.のアイディアを具現化する事を使命としています。クッキングショウの主宰、デモンストレーション、全国で講演、テレビ出演、雑誌の連載、料理教室など。ベリッシモは人との出会いを大切にし、謙虚な姿勢と努力をモットーに地道に活動をしていきたいと思っています。ローマクラブ日本会長、イタリア料理研究会会長 (加盟レストラン18店舗)、クチーナ・ベリッシモ代表を務める。

公式ホームページ
http://www.bellissimoyoshi.net/