新・にほん風景遺産~故郷を見つめなおそう~

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大分・天領日田 水郷の旅
~小京都と三隈川かわ紀行~

大分県日田市は北部九州の中央に位置し、古くから交通の要衝として栄えました。江戸時代には幕府の直轄地天領として、大名を監視する西国筋郡代が置かれ、九州の政治、経済、文化の情報は全て日田に集まり、江戸へ伝えられたのです。

日田市は博多駅から電車で1時間強。江戸幕府御用の豪商たちが活躍し、絢爛豪華な町人文化が花開いた町。九州随一と言わるほどの繁栄を極め、その面影は今も残ります。「天領日田おひなまつり」は当時の豪商たちの生活が垣間見える貴重なイベント。京都や大阪などで買い求めた絢爛豪華なひな人形は圧巻です。

日田は「水郷(すいきょう)」の町としても知られています。水郷のシンボルが九州最大の河川、筑後川の上流にある三隈川。夏には屋形船が浮かび、400年の伝統を持つ鵜飼いは必見です。この三隈川を使って運び出されたのが日田杉。日本三大美林の地ともいわれる日田は江戸時代、幕府の植林奨励により杉が大量に植えられました。上質な杉は売れに売れ、日田の発展に大きく貢献したのです。また日田は焼き物の里でもあります。小鹿田(おんた)焼きは川の水を利用した唐臼(からうす)で土を砕き作られます。江戸時代から変わることなく、里に響き続ける唐臼の音。そこで作られる素朴な焼き物は今や全国で大人気。年に数度しか行われない登り窯での焼成にも遭遇しました。

天領日田としての歴史の名残。そして森が育む豊かな水の里、水郷日田の春を
作家・島田雅彦が旅します。