新・にほん風景遺産~故郷を見つめなおそう~

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「奥の細道」紀行 象潟・九十九島~芭蕉が憧れた絶景と鳥海山の恵み~

秋田と山形にまたがる鳥海山は古くから山岳信仰の霊山として崇められてきました。日本海から稜線が立ち上がり、その力強く、美しい姿は「出羽富士」とも称されます。
今回は鳥海山の麓に広がる秋田県象潟(きさかた)を旅人・中本賢が巡ります。

象潟は「奥の細道」で知られる松尾芭蕉が訪れた最北の地。芭蕉を魅了したのは鳥海山の麓に広がる浅い海と大小様々な島で構成された九十九島の絶景でした。江戸時代には「東の松島、西の象潟」と呼ばれたほどの景勝地。しかし文化元年(1804)に起きた大地震で地盤が隆起し、象潟は一変。海は消え陸地になり、大小様々な島だけが当時の面影を残しています。
5月にはいると、この地方にも遅い春、田植えの季節がやってきます。実はこの時季、かつての海に浮かんだ九十九島の絶景を見ることができます。鳥海山からの恵みの水が田を浅い海に変えるのです。そこには松尾芭蕉が見た、かつての象潟が広がっていました。
漁港を訪ねると水揚げされたばかりの旬の魚、ヒラメやタコなどが所せましと並び、旅人も旬の魚に舌鼓。鳥海山がもたらした海の恵みを堪能します。
鳥海山の噴火によって作られた象潟。そこには鳥海山がもたらした海や大地の恵みがありました。そして旅のクライマックスは、象潟を一望できる鳥海山登山。苦労して登り、見えた風景、そこには松尾芭蕉も見たかったであろう「幻の絶景」が広がっていました。旅人が象潟の遅い春を満喫します。