にっぽん今昔道 江原啓之のちょっと道草
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ストーリー

東京都・「鏡見る心を教わる府中」




今回は東京都府中市で道草です。
府中は、645年の大化の改新で国府が置かれた武蔵国の中心として古くから歴史を重ねてきた町。江戸時代には甲州街道「府中宿」として賑わいました。
府中といえば「大國魂神社」を思い出すという江原。さっそく道草することに…。

大國魂神社は創建111年。今年で1900年の年月を数えるお宮です。
鳥居をくぐる前にそびえ立つ大きなご神木に敬意をはらい、参道へと歩みを進めます。

禰宜の原島弘さんにお話を伺うとお祭りについて教えて下さいました。
大國魂神社例大祭「くらやみ祭り」は、江戸時代から夜のまっ暗な中を神様が渡御されるという事で「くらやみ祭り」と呼ばれたのだそうです。

今回特別に拝殿奥にあるご本殿の前まで入らせて頂きました。
「お白州」と呼ばれる場所では「くらやみ祭り」の際にお神輿を並べて、御神体をお神輿に移す儀式が行われるのだそうです。
江原はとても驚いた様子。なんでもご神体自体を移すのは大変珍しいそうです。

さらに、昔はお祭りの際、お神輿に鏡を自分の魂として付けたのだそうです。
古より鏡は己の心を映すものだと考えられてきました。また神社に鏡があるのも「かがみ」の「が(我)」を取ると「かみ(神)」になるという教えから、手を合わせる際には「我を取るように」と言われてきたのだそうです。

江戸時代から続く「くらやみ祭り」は、別名「提灯祭り」とも言われています。
くらやみで欠かせないのが提灯だからです。
お祭りで使われている提灯を作る職人さんがいるということで、道草することに。
創業80余年の内藤提灯店を守っているのは、3代目の内藤誠さん。
お祭りで使う提灯はもちろん、飲食店に飾られる看板としての提灯も作られています。

しかし内藤さんにとって「くらやみ祭り」は楽しめるものではないのだそうです。
自分の分身ともいえる提灯に相対する度、採点をする気持ちでいるのだとか…。
鏡を見ているかのような気分になると話してくれました。

内藤さんの提灯づくりのこだわりは"和紙で作る"こと。最近はビニール製の提灯の需要もあるそうですが、やはり昔からの和紙の中に灯るろうそくの火は格別だと感じるそうです。ただの明るさではない、心を包んでくれる柔らかさやホッと落ち着かせてくれる力があるのが提灯だと言います。
言葉を交わさなくてもみんなが温かい気持ちになれる、そんな力があると聞いた江原。
今こそ提灯の良さを再認識するべきだと感じた道草でした。