文化遺産の旅
  • トップページ
  • バックナンバー
  • contents3
  • contents4

バックナンバー

奈良県・五條市



今回の訪問地は、奈良県の五條市。街道の要に花開いた、魅力的な文化を紹介する。
旅の始まりは、新町通りから。声の旅人・寺田農は、風景に圧倒された。道の両側には歴史ある建物が建ち並び、まるで江戸時代のよう。築4百年の古民家もあり、通り全体が五條市の文化財に指定されている。
旅は続いて榮山寺に向かう。吉野川を見下ろす古刹だ。創建は奈良時代と伝えられている。境内は、文化財の宝庫。梵鐘、八角堂など素晴らしい国宝を紹介する。
五條市は、俳人・藤岡玉骨の故郷だ。今も残る生家を訪ねて、郷土料理の柿の葉寿司をいただく。意外な取り合わせの背景には、文化を保存する人々の思いがあった。
旅の後半は、西に進んで念仏寺(陀々堂)へ。屋根は風情ある茅葺き。創建は、平安時代から鎌倉時代にかけてと言われている。
陀々堂の名物は、「鬼はしり」と呼ばれる祭事だ。鬼が人々の災いを祓う、火祭りの一種である。闇を照らす炎は、荘厳な佇まい。やがて鬼が境内を疾駆する。勇壮な祭りに、旅人もしばし絶句。5百年の歴史を持つ鬼走りには、必見の価値がある。大和の国・五條市に伝わる伝統文化は、遙か遠い歴史の彼方から物語を語りかけてくるかのようであった。