文化遺産の旅
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愛媛県・松山市・伊予市



今回の訪問地は、愛媛県。瀬戸内海を望む、伊予市と松山市の文化を紹介する。

旅の始まりは、伊予市から。旧萬安港の灯台は、歴史を感じさせる石造り。大正時代に電灯へ換わったが、当初は菜種油を燃やしていたという。声の旅人・寺田農も、江戸期の港湾風景に思いを馳せた。

山に目を移せば、国の有形文化財・福田寺がある。山門、本堂、通玄庵はいずれも江戸時代の建築。意匠も凝っていて、興味は尽きない。二百年の時を超えて、歴史の重みを語りかけてくるかのようだ。

伊予市には、伝統的な無形文化財も伝わっていた。両谷獅子舞の豪快な所作と笛太鼓には、声の旅人も心躍る思いだ。

旅の後半は、北上して松山市へ。街並みを見下ろす松山城は、勇壮な城構え。山の樹木と共に、文化財の指定を受けている。四百年の歴史を持つ城郭には、随所に武家文化の名残りが見られた。

一方、城下には近代遺産も保存されている。その一つ、松山地方気象台は、昭和初期の建築。当時の官公庁様式とは異なり、左右非対称の珍しい設計だ。驚いたことに、気象台は今も現役で稼働中。旅人も思わず感嘆の声をあげた。文化財を守るだけでも苦労は絶えない。実用に供すとなれば、なおさらだ。伊予・松山の地は、郷土文化への深い愛情に満ちていた。