文化遺産の旅
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和歌山県・紀の国編



今回の訪問地は、和歌山県。かつて「紀の国」と呼ばれた地を巡り、豊かな自然が育んだ文化を紹介する。

旅の始まりは、旧龍神村の龍神温泉から。美人の湯として知られる名湯だ。江戸時代には紀州藩主の湯治場となっており、徳川家との関係も深い。その流れを汲む老舗旅館には、随所に歴史の香りが漂う。

紀州の山深くから紀の川の流れに沿って、旅路は大和街道へ。やがて、高野山に続く道との分岐点にさしかかる。参拝者を導く石塔は「町石」と呼ばれる文化遺産。今も大切に保存されて、人々を出迎えていた。

声の旅人・寺田農は、さらに紀の川沿いを下って行く。豊かな水は田畑を潤し、作物を育んだ。江戸時代に端を発する灌漑施設に、先人の知恵と情熱を感じとる。

水は流れて、和歌山城へ。川を天然の外堀とした名城だ。石垣から天守閣に至るまで、城内はすべて歴史の舞台。声の旅人は、ゆっくりと時の流れを遡っていく。近隣には紀州東照宮もあり、荘厳華麗な装飾が徳川家の栄華を今に伝えている。

旅の終着は、和歌浦。万葉集にも詠われた海辺に立ち、往時を偲ぶ。和歌の里にふさわしく、歌人の碑も多い。奈良・平安の人々は、何を思って海を見つめていたのだろうか。紀州和歌山の文化は、旅人の心を静かに包んでいく。