世界の名画 ~美の迷宮への旅~

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ストーリー

孤高の天才が見せた幻想と新時代への夢 
アンリ・ルソー 「蛇遣いの女」 

番組名

今日の一枚は19世紀末の「素朴派」を代表するフランス人画家アンリ・ルソーの「蛇遣いの女」。密林の中で笛を奏でる、蛇遣いの女のシルエットが満月の光によって神秘的に浮かび上がっています。観る者を幻想的な世界へと誘い、誰も見たことのない絵画を彼は生み出しました。
40歳で本格的に画家を目指したルソーはルーヴル美術館での模写やパリの植物園での写生、子ども用の図鑑などを通し、独学で絵を学んだ日曜画家でした。彼が追求したのは類い稀な想像力により、写実と幻想の交錯する独創的な空想の世界。
しかし、唯一無二の絵画は画壇に無視され、世間から酷評を浴びせられるのです。
「ルソーの絵は6歳の子供が筆の代わりに指を使い、パレット代わりに舌を使った、なぐり書きに似ている」
そんな彼の才能を高く評価していたのが美術評論家で詩人のアポリネールや若きピカソ等、当時パリに集まった画家の卵たちでした。
中でもルソーの自由な発想と独創的な世界観に魅了されたピカソは「ルソーを讃える夜会」を開き、彼の芸術性を讃えました。
ルソーは精神的な仲間の支えを胸に「素朴」であること、「自然」に倣うことを自身の美徳とし、独自の世界を貫き通します。
そして晩年、彼は理想の境地でもある「熱帯の楽園」へと辿り着くのです。
また今回は「ルソーを讃える夜会」の舞台となった洗濯船跡やルソーが足繁く通ったパリ植物園、そして、ルソーの故郷ラヴァルも訪れ、独特な絵画の原点に迫ります。
世間の嘲笑を浴び、酷評の中で生きた遅咲きの画家ルソー。晩年に辿り着いた理想の楽園は、彼を西洋絵画史上最大の日曜画家へと導き、さらにルソーの描く独特な絵は、後の絵画における新時代の天才たちをも生み出していくきっかけともなっていたのでした。
孤高の天才画家ルソーの魅力に迫ります。