世界の名画 ~美の殿堂への招待~

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ストーリー

ルドルフ2世 奇想のコレクション ウィーン美術史美術館

番組名

およそ650年にわたってヨーロッパに君臨した名門ハプスブルク家。神聖ローマ帝国皇帝の地位を世襲した歴代の当主たちは、古今の美術品の収集に力を注ぐとともに、パトロンとして芸術家の活動を支え、莫大な美の遺産を残しました。それらを一堂に収めたのが、かつての帝都ウィーンにあるウィーン美術史美術館です。建築に20年の歳月を費やし、美術館がオープンしたのは1891年。パリのルーブルやマドリードのプラドと並ぶ、ヨーロッパ三大美術館の一つに数えられています。絵画だけでも7千点におよぶ壮大なコレクションに築き上げた皇帝たちの中でもひときわ異彩を放つのが、16世紀後半から17世紀初めにかけて在位したルドルフ2世です。
宮廷をウィーンから現在のチェコの首都プラハへと移したルドルフは、居城となったプラハ城に多くの芸術家を招き、美を貪るかのような生活を送りました。とりわけ寵愛したのは、3代の皇帝に仕えたイタリア出身の宮廷画家アルチンボルドでした。植物や海の生物などを組み合わせて描いた判じ絵のような肖像画を、知的好奇心旺盛な皇帝はたいそう好んだのです。お抱えの画家たちに絵を作らせる一方、収集にも熱心で、ブリューゲル、デューラー、コレッジオなど、買い付けた一流画家たちの名画で城内は埋め尽くされたといわれています。ルドルフ2世の飽くなき好奇心は自然科学にも向けられました。プラハ城には、天文学のケプラーをはじめ、多くの科学者たちが集い、庭園は世界中の珍奇な動植物であふれていました。錬金術や魔術にまでのめり込んでいった彼は、国務をなかば投げ出して城に引きこもり、マニアックな世界に没頭しつづけたのです。
ハプスブルク家きっての美術愛好家として歴史に名を残したルドルフ2世。ウィーン美術史美術館に収められたユニークなコレクションを紹介するとともに、ゆかりのプラハ城も訪ね、その謎めいた人物像に迫ります。