世界の名画 ~美の殿堂への招待~
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黄金の画家クリムトと世紀末の女たち オーストリア美術館
オーストリアの首都ウィーン市内の丘陵地に立つベルヴェデーレ宮殿。ハプスブルク家に仕えた将軍の離宮として18世紀に建てられたこの建物は現在、国内で二番目の規模を誇る美の殿堂、オーストリア美術館となっています。中世から現代まで、おもにオーストリアの名画を展示するこの美術館で、文字通り、ひときわ輝きを放つ作品があります。
19世紀末ウィーンの巨匠、グスタフ・クリムトの最高傑作「接吻」。口づけを交わす男女を包み込む、まばゆいばかりの金色の装飾。クリムトはこの黄金を駆使して、きらびやかな光と色彩が織りなす、幻想的な官能の世界を描き、当時の美術界に一大センセーションを巻き起こしたのです。
クリムトは1862年、ウィーン郊外の金細工師の家に生まれました。工芸美術学校で絵やデザインを学んだ後、装飾の職人として人生のスタートを切ります。駆け出しの頃の彼は、近代化まっただ中の当時、市内に続々と誕生した公共建築の壁画を手がけることで、頭角を現していったのです。その建築ラッシュが下火になると、クリムトは画家へと転身。伝統的な美術との決別を理念に掲げる「分離派」という組織を立ち上げ、革新的な作品を世に問う芸術家たちの先頭に立ちます。
クリムトが生涯にわたって追い続けたテーマ、それは女性でした。社交界の貴婦人や恋人などをモデルに、それまでのタブーをも打ち破る官能的な表現にも大胆に挑んでいきます。そこにただよう妖しげな雰囲気は、世紀末だった当時の世相を反映したものでもありました。そんな女性たちの美をきわ立たせる究極の演出が、黄金の装飾だったのです。
番組では、クリムトの作品に関して世界最大のコレクションを誇るオーストリア美術館の傑作をたっぷり紹介するとともに、ウィーン市内に残るクリムトゆかりのスポットを探訪。世紀末を代表する天才画家の生涯と、黄金に彩られた作品の秘密に迫ります。