世界の名画 ~美の殿堂への招待~

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ストーリー

ドイツ近代絵画の至宝 ハンブルク市立美術館

番組名

ドイツ第二の都市ハンブルクが誇る市立美術館には、マネの「ナナ」を初めとする魅力的な作品が数多く収蔵されています。中でも見逃せないのが、十九世紀初頭に花開いたドイツ・ロマン派の二大巨匠のコレクション。一方の巨匠フリードリヒは、荘厳な風景で、宗教的精神を象徴的に表現した画家です。美術館の顔ともなっている「氷の海」は、画家が幼い日に遭遇した悲劇を織り込んだ作品と言われ、フリードリヒを語る上では外せない一枚です。そしてもう一方のルンゲは、美しい風景で彼の神秘的な宇宙観を表現しようとした巨匠です。彼のまとまった作品コレクションは、ハンブルク美術館以外では観ることが出来ません。
ハンブルク美術館がこれらのコレクションの土台を築いたのは、彼らの作品がまったく見向きもされていない時期のことでした。2人の巨匠は、死後、急速に忘れ去られていたのです。その価値を再評価し、いち早く収集に乗り出したのが、ハンブルク美術館でした。
このオペレーションの影には、34歳の若さで初代館長に抜擢されたリヒトヴァークの存在がありました。
彼の就任当時、美術館には土台となるコレクションがありませんでした。ほとんどゼロから、それも限られた予算で美術館を構築しなければならなかったリヒトヴァークは、埋もれた名画の掘り起こすことによって質の高いコレクションを築くことを考えます。思いつくのは簡単でも、実現させるのは非常に困難なこの方法ですが、リヒトヴァークは粘り強い調査によって、中世ハンブルクで活躍したマイスター達の作品をも見つけ出します。それは、ドイツ美術史を書き換えてしまうほど重要な発見となりました。さらにリヒトヴァークは同時代の作品にも目を向け、当時の人々が批判的だった印象派的な作品への理解を深めようと、様々な策を練り始めます。
「ただそこで観客を待っているだけの美術館など造りたくない」。そう宣言した初代館長が打ち出した秘策の数々を、美術館が所蔵する名画とともにご紹介します。