世界の名画 ~美の殿堂への招待~

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ストーリー

色彩の魔術師 クレーの宇宙 ベルン美術館 & クレーセンター

番組名

「色彩とぼくはひとつになった」――抽象画草創期の20世紀初めに活躍した奇才パウル・クレーは、自身の日記にこう記しています。抽象的なのにあたたかくて親しみやすいクレーの不思議な絵、それは彼の並はずれて繊細で独創的な色彩感覚から生み出されたものでした。セオリーにとらわれない変幻自在な表現を駆使したその作品は、迷宮のように深遠な世界へと私たちを誘います。

クレーは1879年、スイスの首都ベルンに生まれました。この町にあるベルン美術館は、ちょうど同じ年に開館した、スイスが誇る美の殿堂です。3千点以上を数える絵画コレクションの中でもとりわけ多くの人々を魅了しているのが、ギリシャ神話の学芸の神々が集う聖なる山を描いたクレーの大作「パルナッソス山へ」。他にも、同じベルンに生まれスイスを代表する画家となったフェルディナンド・ホドラーや、クレーが影響を受けたドイツ表現主義、フランス印象派の巨匠たちの傑作の数々もこの美術館で見逃せないコレクションとなっています。

そして2005年、ベルンに誕生したもう一つの美の殿堂が、クレー作品の世界最大のコレクションを誇るバウル・クレー・センターです。その数はクレーの全作品の実に4割にあたる4千点。それらをつぶさに見ていくと、ミステリアスな作品を読み解くヒントとなるいくつかのキーワードが浮かび上がってきます。たとえばその一つが「音楽」。クレーはオーケストラで活動するほどの腕を持つバイオリニストでもありました。音楽家としての感性は、ハーモニーを奏でるかのような独特の色彩表現ともつながっているのです。

ベルンは旧市街がユネスコの世界遺産にも登録された美しい町。市内にはクレーの足跡をたどる散策コースも設けられています。番組では、スイス屈指の二つの美術館とクレーゆかりの場所を訪ね、色彩の魔術師クレーの創作の秘密に迫ります。