BBC地球伝説

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ストーリー

東南アジア最後の秘境
―ミャンマー知られざる野生の宝庫へ―
2 幻のトラ

ミャンマーの森はかつて野生のトラの聖域といわれていたが、詳しい生態は全くつかめていない。調査チームは今や「幻」といわれるほど数が減っているトラの生息を知るため、危険な森の奥に入っていく。
一方、今回の調査のもうひとつの目的は、森に暮らす動物の種類や数などの実態を把握することだ。撮影チームは無人カメラや独自の仕掛けを使って、次々と珍しい野生動物の存在を確認する。クマ、サル、ゾウ、ネコ科の動物7種、バク、セイザンコウ…。まるで貴重な動物の大図鑑のようだ。ミャンマーの森が多様性に満ちた場所であることが明らかになった。多くの哺乳類がいる森は、トラにとってもエサが豊富な暮らしやすい場所であるはずだ。しかし、彼らの姿は一向に確認できず、調査は難攻を極める。果たして、カメラはトラの姿を捉えることはできるだろうか。

世界に生息する野生のトラの数は、この100年間で10万頭から3000頭に激減している。森林消失や密猟の影響が大きい。世界的に最も絶滅が危ぶまれている野生動物だが、ミャンマーでの生態は全く分かっていない。
外国人の生物学者とカメラマンで構成される調査チームが、その様子に迫る。野生動物カメラマンのゴードン・ブキャナンとジャスティン・エバンスが、トラを追い求めて危険な森の奥地に入る。しかし、1日30キロ以上移動するトラを探すのは簡単ではない。
そんな中、トラのフンを発見。その中にはサルやシカの毛がたくさんあったことから、獲物をたっぷり食べていることが分かった。しかし、実際にその姿は見えない。
一方、もう一つの課題である、森の多様性を探る調査も進められた。多くの無人カメラや仕掛けを使って驚くべき数の生き物を見つけることができた。絶滅の危険が高いマレーグマ、テナガザル、ヒョウ、ヤマネコ、ウンピョウ、バク、コウモリ、高熱のガスを噴射する虫など…。哺乳類だけで50種類以上の生息を確認し、そのうち22種は肉食動物だった。特に食物連鎖の頂点にいるネコ科の動物が多かったことは、森の豊かさを示す証拠となった。まさに野生動物の宝庫だ。しかし、そんな中、調査チームにとって衝撃的な出来事も。自然にあふれる森のすぐ脇で、大規模な伐採が行われていたのだ。それは、野生動物のすみかを奪うだけでなく、密猟者たちを森に入りやすくしてしまう。
調査が進む中、トラはなかなか見つからない。諦めかけた時、ジャスティンが足跡を発見した。後ろ足のサイズは9センチ。その姿が無人カメラに映っていたのだ。それは森の王者にふさわしい優美な姿だった。謎に満ちていたミャンマーの森の姿が明らかになっていく。